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ブログ・小山 雅敬
第158回:自己評価制度のデメリットと陥りやすい誤解
2019年6月11日
【質問】社員数30人の運送会社です。現在、人事評価表に自己評価を採り入れていますが、評価結果が実態と大きく乖離しており、形骸化しています。自己評価制度の注意点があれば教えてください。
運送会社の人事評価制度に自己評価を組み込む第一の目的は、社員の自覚と行動改善を促すことにあります。特に常時職場外で働き、取引先と接することが多い運転職には「自覚のある行動」が求められます。評価結果を今後の行動改善に結びつけるためには、管理者が一方的に査定するだけの評価制度よりも、自己評価で本人が自らの行動を振り返る機会を作るほうが望ましいのです。このように自己評価制度には、会社の期待事項を本人に理解してもらうメリットがあります。
しかし、一方で自己評価制度のデメリットも存在します。最も大きなデメリットは本人が自分を過大評価し、良い点ばかりつけたがることです。管理者が正しく修正し、指導することができれば、うまく機能するのですが、もし管理者の指導力が欠けていると、本人評価が最終評価結果に多大な影響を与えてしまいます。つまり自分自身を正しく採点した社員よりも、実態以上に高い自己採点をした社員のほうが高評価になる「評価のエラー」が発生します。これが起こる背景には、社員の大きな誤解が存在します。「自己評価の結果で給与が決まる」と勘違いしている社員が多いのです。
自己評価は単に会社評価をつけるための参考にすぎず、自己評価の良し悪しが会社評価に直結するわけではありません。社員の誤解を避けるため、評価表に「備考欄」を設けて、次の文言を入れておくことを勧めています。「自己評価は会社評価の参考として利用するものであり、会社評価に直接反映されるものではありません。自らの行動を振り返り、正しく記載してください」、もしくは「自己評価結果に関わらず、会社が最終評価を決定します」などの文言を明記するのです。
また、実態を無視して高い自己採点ばかりつける社員はマイナス評価にする仕組みが必要です。例えば、普段全くあいさつをしない社員が「あいさつ」の評価項目で高い自己採点をつけていた場合などは、それを修正するだけでなく、別途「行動自覚・自己改善」の評価項目でマイナス評価にする、などです。同様に一次評価者(管理者)に対しても、部下の自己採点を正しく修正できない場合は、管理者用評価表の「管理・指導」項目で、マイナス評価になることを事前に伝えておくとよいでしょう。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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