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ブログ・小山 雅敬
第31回:運送会社の定年後継続雇用
2014年6月10日
【質問】当社には1年契約の準社員とパート社員が約20人在籍しています。現在、採用時点で雇い入れ通知書を渡していますが、その後は自動継続扱いとして特段の手続きは行っていません。先日、業績を理由に、あるパート社員にやめてもらった際、トラブルになったため、契約書を整備する必要を感じています。どう進めていけばよいでしょうか。
運送会社には嘱託、パート、アルバイト、契約社員、準社員など様々な呼称の有期労働契約社員がいます。中小運送会社では、毎年契約書を更新している会社が意外に少なく、書面を取り交わすことなく、口頭で済ませている会社が多くみられます。これは大変労務リスクが大きいことなのですが、雇い止めのトラブルが発生して初めて労働契約の重要性に気が付くケースが多いのです。トラブルを避けるため、労働契約は雇い入れ通知書の配布のみでなく、必ず本人の署名をとる労働契約書を作成するべきです。
契約書には必ず労働契約更新の有無と更新の判断基準を明示します。そして契約期限の30日前には更新または終了の手続きを済ませることが重要です。本年4月から労働契約法が改正になり、有期労働契約の無期労働契約への転換の仕組みが導入されます。有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、社員の申し込みにより無期労働契約に転換させる必要があります。これは正社員にしなさいということではありません。期限の定めを設けない社員にしなさいということです。施行日である4月1日以降の日を初日とする労働契約から対象となりますから、現時点の契約については対象外です。しかし、労働契約書は施行日までに整備しておく必要があり、その他のルールも事前に決めておくことが大切です。見直しや整備の観点は次の通りです。
(1)更新期間の上限を設ける場合は労働契約書に明記しておく(例、5年を上限とする)(2)無期契約に転換した人の処遇(例、賃金は有期契約時と同じとするか別途定めるか等)についてはあらかじめ決めておく(3)無期転換した人との契約書(5年後以降)では「定年」の記載を忘れないようにする(4)クーリング期間(原則6か月以上、契約期間の半分以上の空白期間など)の管理を全社管理とする(別の事業所で6か月以内に採用した場合、通算されることになるため)(5)雇い止め基準を再整理し、契約書で明示する(6)期間満了後の雇用継続に対して、事前に期待を持たせるような言動を行わないように管理者に教育指導しておく(合理的期待が認められる場合は雇い止めできない場合がある)(7)期間の定めがあることによる不合理な労働条件が禁止されるため、役割の明確な違いを一覧にして整理しておく(8)通勤手当や食堂の利用、安全対策などは有期と無期を同様にする
(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬) -
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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