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ブログ・小山 雅敬
第79回:デジタコのデータを指導に生かす
2016年4月11日
【質問】社員数80人の運送会社です。長距離輸送が中心です。現在、デジタコを全車に導入していますが、そのデータを指導に十分活用できていないと感じています。指導のポイントや指導法について教えてください。
最近はデジタコを全車両に導入している会社が増えています。経営相談の時に見せていただく資料も大半がデジタコによる運転日報で、アナログのチャート紙を見る機会はめっきり減りました。
デジタコから出力される資料は運行状況が把握しやすく、法定の管理項目以外に経営効率のデータまで幅広く拾える点に大きなメリットがあります。ただし、その貴重な情報をドライバーの指導に十分活用している会社は少ないように思います。拘束時間など改善基準告示に関連する管理項目に比重がかかり、その他の貴重な生情報を見逃しているケースが見られます。
確かに、事故や行政処分につながる運転時間や休憩時間などの管理は大変重要であり、注意深く実施しなければなりません。そして、以前と比べると格段に意識が高まっています。拘束時間を1日16時間以内に収めることが困難な会社は依然として多いのですが、拘束時間などを注意して管理する会社が増えたことは実感します。
ところが、運転日報を拝見すると、積み下ろし時間が全く記載されていなかったり、異常に長い作業時間になっていたりします。その他にもおかしな点が多々あり、不合理な点をチェックしてヒアリングすると、原因はドライバーがボタン操作をしていないか、誤入力しているケースが大半です。また、その運転日報に運行管理者が指導した記録がないので、運行管理者自身も気づいていなかったことがわかります。
本来、乗務後点呼時に作業内容の記録を日報で確認し、その場で指導すべきなのですが、運転日報の詳細までは良く見ていないのかもしれません。作業内容および開始時間、終了時間の記録は後日の荷主交渉にも利用される情報であり、大変重要な情報であることを指導する必要があります。表面的なチェックだけでは不十分であることを管理者に伝えましょう。
一方、運転日報の中で一番わかりやすい指標は安全運転評価点です。これは本来、運転動作の状況を判断する指標であり、ドライバー本人の意識向上に活用するものです。ところがこの基準設定が大変甘く、速度オーバーや急加速、急減速が頻繁に発生しているドライバーの評価点が90点を超えているケースも見られます。優良ドライバーとほとんど差がついていないのです。ドライバー自身の意識向上を図るという本来の目的を達成するためには、少し辛目の基準設定のほうが良いと思います。
経営相談で全国を回っていると、時々「うちのドライバーの評価点は全員95点以上です」と言われる会社がありますが、差がつかない基準設定ならば点数をつける意味が薄いのではないかと感じることもあります。デジタコの発達により、今は速度とエンジン回転数との相互関係に異常があればすぐに数値で見極められます。アイドリングや波状運転の状況も一目でわかります。個人別の燃費も表示され、まさに部下指導のための情報の宝庫と言えます。ドライブレコーダーがなくても運転日報のデータを見れば仕事ぶりが推測でき、ドライバーの性格もわかります。急加速、急減速が発生した地点が明示されるわけですから、ヒヤリハットの収集も出来ます。
データは活用しなければ、単なる数字です。現場で指導に活用されて、初めて「情報」になります。運行管理者は毎日、運転日報の細かい点まで注意深く見ることが大事です。今日の生情報が最も教育指導に使える材料になるのです。終業点呼時に何を本人に確認すればよいか、今後の事故防止に活用すべき情報は何か、を瞬時に判断する力が求められます。ドライバーにもその意識を浸透させる必要があるでしょう。
私はデジタコから出力された実際の運転日報をもとに、運送会社の幹部と配車係に対して情報の生かし方に関する研修を行うことがあります。その際、「研修の場で初めて出力データの意味や改善基準告示の正しい内容が確認出来た」と言われる方もおられます。デジタコからの情報の掴み方と生かし方を、会議などで社員に伝えていくことから始められると良いと思います。
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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