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ブログ・小山 雅敬
第88回:免許取得費補助の条件として取得後の勤務を約束させたい
2016年9月25日
【質問】人手不足対策として中型免許や大型免許取得にかかる費用を会社で負担することを検討しています。しかし、免許取得後にすぐ辞められては困るので、3年程度の勤務を条件として誓約をとりたいと考えていますが、いかがでしょうか。
最近、求人対策の一環として「運転免許取得費用補助制度」を採り入れている会社が増えています。内容は一部補助から全額補助まで様々であり、ホームページで求職者のメリットとしてアピールしています。しかし、その運用については十分に考慮されていないケースが時々見受けられます。
多くの会社が免許取得費用を補助する背景には、免許取得後もわが社で続けて働いてくれるだろうという期待があると思います。免許を取得した途端に他社へ転職されることを予定して補助している会社はないでしょう。
そこでご注意いただきたいのは、法的観点からの制度づくりです。例えば「免許取得費用は会社が出しますので、3年間は当社で勤務してください。途中でやめたら全額返してもらいます。それが条件ですよ」という制度では違法と判断されるリスクが高くなります。労働基準法16条では「使用者は労働条件の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と規定しています。違約金と解釈されれば違法となるわけです。仮に誓約書をとっていても無効となるでしょう。
また、業務上必要な資格の場合は業務との関連性が高いため、会社が負担するのが当たり前との考え方も成り立ちます。「業務指示」があればなおさらです。運転免許取得費用補助制度を導入する場合は、後日労使トラブルにならないよう注意する必要があります。
それでは、「費用補助する以上、免許取得後、一定期間はわが社で働いてもらいたい」という会社の本音を制度の中でどう反映すれば良いでしょうか。
重要なポイントは労働関係を不当に強要していないこと、費用の返還を不当に約束させていないことです。そのためには希望者を対象に貸与する単なる「消費賃借契約」とし、一般的な返済方法を書面で定めておくことが必要です。
勤務の継続とは無関係に一定期間の返済猶予を認めることは可能です。例えば、一定期間勤務し会社に貢献してくれた社員を「返済免除の対象」とする、などの取り決めが考えられます。この時、免除の対象期間を不当に長期に設定しないことが肝要です。人材採用の一助として導入した制度が、後日のトラブルの種にならないよう気をつけましょう。
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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