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ブログ・小山 雅敬
第176回:退職社員から残業代請求を受けた
2020年2月18日
【質問】退職した社員から未払い残業代の請求を受けました。在職中に不満や疑問も言わず、納得して働いていた社員からの突然の請求に大変困惑しています。現行の賃金体系に問題があれば、早急に見直したいのですが、どのように進めてよいかわかりません。
弊社では、運送会社の賃金体系整備を数多く手掛けておりますが、その半数近くの依頼が退職社員からの残業代請求を契機に、賃金体系の整備を相談される案件です。残業代請求は、その約9割が退職社員からの請求です。トラブル事案は双方の弁護士による交渉になりますが、弊社は人事賃金制度の見直し整備をサポートしています。
最近は年を追うごとに依頼が増加し、多い時は1か月に10件近くの依頼を受けることがあります。残業代請求を受けて困惑する運送会社がいかに多いかを実感します。
新賃金体系の作り方は、その会社の現行賃金体系の内容と、その会社の業務内容、車格などにより千差万別ですが、残業代請求トラブル防止の観点で共通して気を付けておくべき点があります。残業代請求を防止するための注意点(改善のポイントに通じます)を列挙すると次のとおりです。
①労働時間管理が適切になされているか…出庫・帰庫の時間管理だけでなく、点検点呼から始まる労働時間の管理、休憩時間の管理までが問われます。実際に「休憩が取れなかった」と主張された事案もあります。②通常の賃金と残業代との区分が明確になっているか…残業代などの割り増し賃金が基本給や歩合給の中に組み込まれているという説明は通りません。特に定額残業を使う場合は明確に区分することが重要です。また、賃金規定は周知し、個別に労働契約書で本人の確認をとることが重要です。③割り増し賃金の計算が間違っていないか…運送会社に多い固定給・歩合給の混合型賃金の場合、それぞれの割り増し率も計算方法も異なるため、計算間違いがないかを再チェックする必要があります。④経営の合理性を維持する…残業代請求を受けた途端に慌てて従来の歩合給を固定給体系に変えてしまう会社がありますが、賃金体系は運送会社の経営の根幹をなすものであり、コンプライアンスと経営合理性の両面を考慮して冷静に新賃金体系を検討すべきです。⑤社員全員から同意を得て、なるべく早く改善する…問題点を放置したまま時間が経つと残業代請求が拡大し、収拾がつかなくなることがあります。問題が発生した時は、極力早めに改善することが重要です。新賃金体系は既存の社員に十分説明し、全員から同意を得ることが重要です。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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