-
ブログ・名南コンサルティングネットワーク
第7回:下請法に基づく適正取引の重要性(運賃について)
2013年10月7日
今回は、運送業における下請法規制として最も重要な「運賃」に関する問題を取り上げたいと思います。下請法の適用対象となる取引を行う場合、下請法第4条第1項第3号(下請代金の減額)に該当しないか注意することが必要です。親事業者が、あらかじめ定めた代金の額を、下請け事業者の責に帰すべき事由がないにも関わらず減額した場合、下請法に違反することになります。
具体的に問題になる代表的な事例としては、(1)運賃の引き下げの合意が得られた場合に、運賃引き下げの合意時よりも前に行われた運送業務に対して改定運賃を遡って適用して運賃を減額すること(2)運送中の荷物が毀損したことを理由として、実際の損害金を上回る金額を代金から差し引くこと(3)文書による合意がないにも関わらず、振込手数料を差し引くことにより代金を減額すること(4)親事業者が荷主から代金を減額させられたことを理由に下請代金を減額すること──などが挙げられます。
下請け代金の減額禁止規定のポイントは、発注時に決定していた下請け代金を、下請け事業者の責に帰すべき理由がないにも関わらず減額する点にあります。したがって、合意により運賃を改定して以降の業務について改定運賃を適用することや、下請け事業者の責に帰すべき事由で発生した実損害額を差し引くこと、契約書に下請け事業者が振込手数料を負担する旨の記載がある場合に振込手数料相当額を差し引くことなどは、下請法違反とはなりません。
運賃を巡る問題が生じないようにするには、親事業者と下請け事業者は事前に十分協議を行い、業務範囲、運賃の算定基準、費用負担、支払い方法、事故発生時の責任の所在と賠償額の算定方法など、あらかじめ具体的な内容について契約書等の書面で定めておくことが大切です。
また、取引基本契約書はもちろんのこと、個別契約の内容や入金状況の確認など定期的に監査を実施しておくことも有用であるといえます。
コンプライアンス経営の第一歩は、適正な契約とそれに基づいた適正な運用から始まります。
(小谷祥・名南コンサルティングネットワーク http://www.meinan.net/)この記事へのコメント
-
-
-
-
筆者紹介
名南コンサルティングネットワーク
東海地区トップクラスの経営コンサルタント集団。税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、不動産鑑定士、中小企業診断士など様々な資格を活かし、経営コンサルティングだけでなく労務管理、税務会計、各種登記・許認可申請、資産運用助言、ISO認証取得支援、マネジメントシステム構築支援など中小・中堅企業の経営をトータルにサポート。「運送業支援チーム」を結成し、業界特有のトラブル対応やトラブルの未然防止策などの経営支援に力を入れている。
-
「ブログ・名南コンサルティングネットワーク」の 月別記事一覧
-
「ブログ・名南コンサルティングネットワーク」の新着記事
-
物流メルマガ