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ブログ・名南コンサルティングネットワーク
第12回:下請法に基づく適正取引の重要性
2013年12月16日
前回は、運賃を巡る下請法上の規制について取り上げましたが、今回は、運賃以外で運送業界でよく問題になる同法上の禁止行為のひとつ、「購入・利用強制の禁止(同法第4条第1項第6号)」を取り上げてみたいと思います。
同法では、親事業者が給付の均質や改善を図るためといった正当な理由がないのに、親事業者の指定する商品を強制的に下請け事業者に購入させたり、サービスを強制的に利用させて対価を支払わせたりすることが禁止されています。
これは、親事業者が自己の立場を利用して、自社商品やサービスを下請け事業者に押し付け販売することを防止するための規定です。禁止されるのは、親事業者の指定する商品やサービスですので、自社以外(例えば、グループ・関連会社、取引先など)の商品・サービスの購入や利用を強制した場合も、この規定に該当します。
ここで禁止されるのは、商品やサービスの購入・利用を「強制」することであるため、親事業者と下請け事業者との間で任意に購入・利用する契約を結ぶ場合には同法に違反しません。そのため親事業者もあまり深く考えずに、自社関連の商品やサービスの購入・利用を下請け事業者に薦めることがあるかもしれません。しかし、下請け取引の構造上、下請け事業者が親事業者からの依頼を拒否することは事実上、できないという状況も考えられます。
このような場合は実質的に「強制した」と判断され、同法違反に該当する恐れがあるため、親事業者としても注意が必要です。
運送業界で、この規定が問題になる事例としては(1)運送トラックの車種を限定し、指定したトラックを購入させること(2)下請け事業者が必要な保険に加入しているにもかかわらず、自己の指定する保険に加入させること(3)親事業者が自社グループ会社のキャンペーン商品を購入させること、などが考えられます。
同法は、下請け事業者の利益を保護することを目的としていますが、今回のテーマのように、親事業者としても知らず知らずのうちに同法に違反する状態になっていることも考えられます。親事業者としてのコンプライアンス経営を確立するためには、自社が取引上、優位な立場にいることを十分に意識して、下請け事業者に不当な要求をしていないか見直してみることも必要といえます。
(小谷祥・名南コンサルティングネットワーク http://www.meinan.net/)この記事へのコメント
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筆者紹介
名南コンサルティングネットワーク
東海地区トップクラスの経営コンサルタント集団。税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、不動産鑑定士、中小企業診断士など様々な資格を活かし、経営コンサルティングだけでなく労務管理、税務会計、各種登記・許認可申請、資産運用助言、ISO認証取得支援、マネジメントシステム構築支援など中小・中堅企業の経営をトータルにサポート。「運送業支援チーム」を結成し、業界特有のトラブル対応やトラブルの未然防止策などの経営支援に力を入れている。
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