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ブログ・野口 誠一
第3回:真犯人は誰?
2004年1月10日
倒産社に共通する誤解が二つある。一つは「自分に限って倒産するはずがない」という思い込みであり、もう一つは「倒産の原因は経済環境にある」という思い違いである。前者の誤解には「願望」がくっつき、後者の誤解には「言いわけ」がくっついている。この二つの誤解は、一枚のコインの裏表のような関係にあると言っていい。
噂と同様、人間は根拠のないことほど信じやすい。それも、かたくなに信じて疑わない。倒産者は一様に「自分の会社が倒産するなどとは夢にも思わなかった」と異口同音に言う。人生には登り坂もあれば下り坂もある、とは誰もが知っている。が、「まさか」という坂があることまではなかなか思い及ばない。そのスキに乗じてしのび込むのが願望である。
しかし、経営は願望でもなければ信仰でもない。冷徹な数字だけが経営を映す鏡であろう。願望経営の怖いところは、苦境に陥っても、「なんとかなるさ」という安易と無責任を生むことである。
私は日々相談に訪れる倒産者や倒産寸前の経営者に、必ずその原因を尋ねることにしている。が、返ってくる答えはいつも判で押したように同じである。「バブルがはじけたから」「長引く不況のせいで」「銀行の貸し渋りに遭い」「このデフレ下では…」といった塩梅で、苦境の原因はことごとく経済環境にある。「自分がいたらなかったから」「自分に経営手腕がなかったから」などという反省の弁はまず聞かれない。つまり、倒産の犯人は常に外部環境であって、自分ではないのである。見事な「言いわけ」と言っていい。が、その認識の甘さが実は「真犯人」なのである。
私が常々「倒産は突然外部から襲ってくる災厄ではない。それははじめに経営者の心に芽生える」と説くのも、「真犯人は自分である」という意味にほかならない。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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