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ブログ・野口 誠一
第130回:再起の群像 バブル崩壊の津波
2007年5月17日
やがて、バブルがはじけた。Yさんの経営は平成3年の年商12億円をピークに下降していく。そして平成4年、晴天の霹靂が襲った。8000万円の不渡りをくらってしまったのである。Yさんは必死に金策に走り、子供の貯金までかき集め、その場はなんとか切り抜けたが、これで経営は完全に伸び切ってしまった。一度伸びたゴムはもはや元へ戻らない。
いよいよバブル崩壊の津波が押し寄せ、受注が急減していく。Yさんは採算を度外視して受注獲得に走る。手形を振り出しているだけに、それを落としていかなければならないからである。
しかし、それがかえって赤字を積み上げ、経営を圧迫していく。平成6年3月の本決算で9000万円の赤字、続く9月中間決算でも1億2000万円の赤字を出して万事休す。
Yさんの倒産は平成7年1月である。負債総額7億2000万円。土地も自宅も工場も機械も、何もかも失って13年間の経営にピリオドを打った。
結局、バブルがはじけようとはじけまいと、Yさんは倒産を免れなかったに違いない。経営は決断の連続だといっても、そこにはおのずと目標、計画がなければならない。それを忙しくなったから社員を増やす、というような場当たり経営では順境のときはともかく、逆境下では破綻をきたしかねない。
Yさんにしても、もう少し先見性と計画性があれば、設備投資と自宅の新築を同時に行うような無謀は避けられたはずである。まして、仕事の量も決まっていないのに、見栄と体裁だけで大幅増員するなど、無茶としか言いようがない。
場当たり経営は倒産のもとである。また、見栄と体裁は経営者の大敵である。Yさんの失敗はそのことを教えている。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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