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ブログ・野口 誠一
第135回:再起の群像 やり手経営者の弱点
2007年6月21日
倒産に至る道は無数にある。その1つの道だけでも倒産の危険性を十分はらんでいるのに、Kさんの場合は明らかに複数の原因による倒産、いわば複合倒産である。これは経営者としての資質に恵まれた人に、しばしば訪れる悲劇である。
では、Kさんがたどった倒産に至る道とは何か。
第1に、積極経営のゆきずりを挙げなければならない。言うまでもなく、経営は「攻め」と「守り」の両輪ががっちり組み合わさって、はじめて「継営」となる。彼は業容の拡大を急ぐあまり、つい「守り」をおろそかにしてしまったのである。
第2は、抜群の営業センスがかえってアダとなり、いつの間にか売上至上主義に陥っていたことである。「売り上げが伸びているから利益も上がっているはず」と、経理、計数管理を他人任せにするのは危険である。計数は経営状態を如実に反映するリトマス試験紙であり、それは常に経営者のアタマのなかに詰まっていなければならない。
第3は、環境変化に対する適応能力の欠如である。経済環境は常に変化してやまない。経営はその変化に対する「対応業」であるといっても過言ではない。Kさんにとってはオイル・ショックもアフガン侵攻も降って湧いたような災難であったかもしれないが、もしKさんに情勢を的確に分析・判断する能力や、宝石に対する真の知識があったならば、リストラなり生産縮小なりを断行し、「継営」につなげることもできたはずである。
少々厳しい見方かもしれないが、複合倒産するほど経営センスに恵まれているだけに、あえての苦言である。いわゆる「やり手」経営者は、攻めには強いが守りには弱い。Kさんもそうした経営者の1人であったかもしれない。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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