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ブログ・野口 誠一
第144回:バブルに溺れた経営
2007年10月30日
Fさんは昭和52年、29歳の若さでインテリア関係の事業を立ち上げた。
それまでは室内装飾の会社に勤め営業を担当していたが、得意先の知人に声をかけられて共同経営という形で独立した。
が、3年後、その知人が病気でリタイアし、Fさんは名実ともに経営者となった。
仕事の内容は住宅や会社、ビルなどのインテリア(内装)工事で、受注金額が大きいだけに、受注さえ途切れなければ十分にやっていけるビジネスだった。
最初の数年間は鳴かず飛ばずだったが、昭和57年頃から受注が急増し、つれて業績も急角度で上昇していった。
そこへ押し寄せたのがバブルである。Fさんは上げ潮に乗って稼ぎまくり、儲けまくっていく。
バブルは異常だった。景気のいい会社や株成金、土地成金が競って豪華で高級なインテリアを指向するようになり、それがFさんの工事量のみならず、付加価値の高い仕事に結びついていった。
こうしてFさんは目のまわるような忙しさと、濡れ手で粟のような利益を上げていく。
そうしたなかで、唯一のネックは人手不足だった。
Fさんは必死に下請けや職人を確保し、社員を増やして億単位のカネを扱うようになったことから、メーン・バンクに頼んで経理マンを紹介してもらいと、一気に人員を増やした。
その結果、事務所が手狭になり、Fさんは思い切って自宅兼用の自社ビル(四階建て)を建てた。
さらに、社員の福利厚生を兼ねて、軽井沢にログ・ハウスも建てた。
それが難なくできるほど、Fさんの経営は順風満帆だったのである。
このバブルの最盛期、Fさんの業容は年商5億円、社員20人にまで膨らんでいった。
しかし、そこがピークだった。 (つづく)
2007年10月30日 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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