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ブログ・野口 誠一
第156回:多角化路線が裏目に
2008年2月15日
すさまじいバブルだった。地価も株価も天井知らずに急騰していく。「バブルだ。気をつけろ」という者は誰1人としてなく、皆がみな、「バスに乗り遅れるな」とばかりに殺到していく。
Fさんもその1人だった。というより、銀行にバブルの中へ引きずり込まれた、と言ったほうが正しいかもしれない。
毎日のように銀行がやってきて、「いまのうちに土地を手当てしておかないと、いずれ欲しくても買えなくなりますよ」とか、「土地さえ担保に入れてくれれば、いくらでも融資しますよ」と、しきりにけしかける。が、その言葉が日に日に現実になっていくから焦る。
実はその頃、彼は郊外型複合店舗の展開を計画していた。土地が高くなったり、買えなくなったりしては困る。そんな彼が、銀行の勧めのままに土地を手当てし、郊外型店舗事業へ乗り出すのに、さほど時はかからなかった。
銀行は買った土地さえ担保に入れれば、いくらでも融資してくれた。まさに「ツチ」を「カネ」に変える錬金術である。当時は銀行そのものが不動産屋に化けていたと言っていい。
こうして彼は銀行という名の不動産屋にバックアップされ、郊外型複合店舗の次は分譲マンション、パチンコ店、カラオケ・ボックスと、次々に多角化の輪を広げていく。バブル絶頂期にはグループ5社、社員数140人、年商48億円の規模にまで達した。が、そこがピークだった。
やがてバブルがはじける。天井知らずだった地価、株価が一転して底なしに暴落していく。こうなると彼の拡大路線、多角化路線はことごとく裏目にひっくり返り、借入金の金利負担がずっしりと経営にのしかかる。ようやく彼の脳裡に倒産の二文字がチラつきはじめた。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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