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ブログ・野口 誠一
第158回:原点からのスタート
2008年2月29日
──経営は人生のすべてではない。人生という大きな「円」に比べれば、経営など、その中のほんの「点」にすぎない。その「点」につまずいたぐらいで、自殺というのでは、命などいくらあっても足りまい。「経営に命をかける」というのは、しょせん覚悟の話、比喩にすぎない。そんな言葉に酔ってはならぬ。何度つまずいても立ち上がればいいではないか──。
これは私がある本にかいた一節である。Fさんは、この一節に「心の視力も一気に回復しました」と言って八起会を訪ねてきた。その後、心身のリハビリが続く。
当初は彼も銀行を恨み、弁護士を恨み、家族さえも恨んだ。が、やがて反省の時がやってくる。
そして気付く。事業手腕と経営手腕はおのずと別事であることに。その事業も、美容サロンはともかく、その後の多角化は銀行にそそのかされ、バブルに踊っただけにすぎなかったことに。
そこから彼の再起が始まっていく。学生からいきなり赤ちょうちんの親父になった彼は、給料を払ったことはあっても、もらったことがない。そこで、給料をもらう勉強から始めた。
仕事は自分の原点たる赤ちょうちんである。が、給料をもらいながらも、彼の視点はすでに経営者のそれであった。売り上げの不安定な水商売を、どうすれば安定した経営に高められるか。それが彼の視点である。
3年後、彼は再び赤ちょうちんの親父に返り咲いた。目指すは「女性だけでも入れる赤ちょうちん」である。
女性に支持されれば、水商売も経営たり得ると確信したからである。これが見事に図に当たった。
目下、彼の赤ちょうちんは3店にすぎないが、いずれも自己資金による開店である。二度と銀行に頼るつもりはない。目指すはキャッシュフロー経営のみである。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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