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ブログ・野口 誠一
第170回:NHK取材に躊躇
2008年5月23日
平成16年、NHK教育テレビの「ETV特集」で、1時間半にわたって「生きてこそ人生幸あり」という番組が放送された。
内容は「経営破綻、絶望、自殺未遂…生と死の淵をさまよった男たちの物語」「自殺を思いとどまらせた一言」「孤独・不安からの心の再起」という3部構成で、八起会会員3人の人生行路をたどりながら、「家族愛」を語るものだった。
実は、NHKからこの企画を持ち込まれたとき、私は迷った。NHKは出演者にモザイクをかけない、音声も変えない、という。
そういう番組に「倒産」の過去を持つ会員を出演させてよいものかどうか、その迷いである。3人とも倒産、法的整理、免責とはなっているが、その過程で多くの債権者に迷惑をかけた事実は消えない。
NHKは全国ネットである。ETV特集はコンスタントに5%の視聴率(500万人)を稼ぐという。
そうなれば債権者はもとより、親戚や知り合いの目にも止まることになるかもしれない。私は大いに迷ったあげく、3人の心のままに任せることにした。
「会長、私たちは一度死のうとした人間です。しかし、今は心底、生きていてよかったと思っています。その私たちの経験が、かつての私たちと同じ立場、同じ境遇にある人たちの励ましになるなら、少しでも生きる勇気を与えられるなら喜んで、とまでは言えませんが、自殺防止の会の会員として、NHKの取材に応じましょう」。
私の申し出に、3人は異口同音にそう言ってくれた。この言葉に私の迷いはふっきれ、いよいよ番組制作へ入っていく。
やがて放送され、すさまじい反響を呼んだ。その反響の大きさに再放送もされた。次回からその番組に出演した一人、Sさんがどのようにして生死のはざまから再起したか、その実例を紹介しよう。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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