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ブログ・野口 誠一
第178回:保証金不要で出店
2008年7月18日
経営は難しい。とりわけ逆境のときに手腕が問われる。諦めが早くても回復の機を失うし、粘りすぎても深みにはまり、ついには倒産を招く。が、「事業は経営者が諦めたときに終わる」ことだけは確かである。今回からそうした実例を紹介しよう。
Tさんは昭和48年、28歳の若さでスーパーの経営に乗り出した。場所は千葉県松戸市。店舗は駅の近くだったが、なぜかその一角は「商売にならない地区」といわれ、誰も出店しようとしなかった。
Tさんが出店を持ちかけられたのは、その頃。ダメになりかけた父のスーパーを立ち直らせた実績があったからである。が、さすがにTさんも断った。と、店舗の持ち主が「保証金不要」という。Tさんの心が動いた。
ところが親をはじめ知人、友人に相談すると、口々に「やめろ。あそこは商売にならない。だから空いたんだ」「保証金なしというが、タダより高いものはないぞ」と大反対。が、ここで「みんながノーのときはゴーだ」と、Tさんの直感が働き、「とりあえず1年間やってみよう。ダメなら撤退すればいい」とハラをくくった。
さっそく資金集めである。銀行に手持ちの50万円を預けて150万円借り、親からも150万円借りて、300万円の資本金でスタートを切った。
店舗スペースはわずか60坪にすぎなかったが、オープンの日には、なんと6000人もの客が入り、上々のすべり出しとなった。
その直後、オイル・ショックに見舞われたが、Tさんにとってはむしろ追い風となった。
というのも新参という意識があり、当時世間で騒がれた便乗値上げなどいっさいせず、ティッシュ・ペーパーもトイレット・ペーパーも、毎日通常の値段で売ったことが客を呼び、それがのちのちまで信用として残ったからである。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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