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ブログ・野口 誠一
第188回:仕事に必要な「心」
2008年9月26日
またひと月ばかり経ったある日、Mさんがやってきた。
「会長、毎日が辛くてたまりません。もっと張り合いのある仕事を紹介して下さい」と言う。私は言下にハネつけた。いまだに泣きごとを言うようでは、すこしも反省していないと感じたからである。
「張り合いなんて職種の問題じゃないでしょう。それに携わる人の心の問題です。1日の労働と糧に感謝する心さえあれば、どんな仕事にだって張り合いもやり甲斐もあります。八起会にはあなた以上に悲惨な人、苦しんでいる人がいっぱいいます。それでも歯を食いしばって頑張っているんです。肉体労働ぐらいなんですか。夜逃げしてきた者はみんな、そこから始めているんですよ」
「あなた、こういう話を知っていますか。ある日、若い母親が死んだわが子を抱いて、お釈迦さまのところへ駆け込んできたそうです。そして『この子を生き返らせて下さい』と訴えました」
「お釈迦さまは哀れんで『助けてあげましょう。そのためには、よその家のケシの実が必要です。それをもらってきなさい。ただ、いままで死者を出したことのない家のケシの実でなければ効きませんよ』と言った。母親は必死に各家の門戸をたたいて歩く」
「しかし、死者を出したことのない家などあろうはずもない。そして母親は『悲しいのは自分だけではない。愛する者を亡くしたのは自分だけではない』と悟ったという話です。あなたも同じです。辛いのも、苦しいのも、あなただけではありません。まして、自分が播いたタネじゃありませんか。甘ったれてはいけませんよ」
私はこう叱りつけた。すると、彼がいきなり「会長、私も八起会の会員にして下さい」と言う。私はそれも断った。彼にはしばらく反省の期間が必要と判断したからである。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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