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ブログ・野口 誠一
第210回:管理怠慢のひずみ
2009年3月6日
Dさんの絶好調は続く。それもそのはず、すっかり有力ブランドとなったDさんのホルダー、ファイル、キャリーバッグは飛ぶように売れ、丸善との間にOEM(相手先ブランド製品)契約を結ぶなど、大型取引が相次いだのだから。
その間、Dさんは事務所と工場を拡大し、東京・江東区に商品企画センターを、江戸川区に物流センターを新設し、企画・生産・物流の一体化をはかり、さらに銀座にビジネスコーナー(ショールーム)を開設しなど、ひたすら拡大路線を突っ走っていく。
その結果、創業わずか5年で年商6億円、従業員20人という規模にまで急成長した。が、そこがピークだった。本来なら、ここまで膨れ上がった組織を管理するのが真の経営者なのだが、Dさんはそれを怠った。というより、組織管理も計数管理も管理部門や経理部門に任せっ放しで、自分はセールスに没頭し、全国を飛び回っていたのである。
Dさんは一部の商品は問屋を通したが、大部分は小売りに直接卸した。その方が、はるかに利益率が高いからである。しかし、そうなると得意先の小売店回りは欠かせない。ときどき、その小売店から「社長、うちへ来て説明販売して下さい」などと声がかかろうものなら、根がセールス好きだから、いそいそ出かける。すると通常の2倍も3倍も売れるし、小売店は喜び、到底やめられない。
しかし、それはしょせん営業マンの仕事であって、経営者の仕事ではない。経営者が管理を怠れば、その組織は確実に弱体化していく。Dさんがセールスに力をいれているいる間に、すでにそれは始まっていた。注文のやりとりがいい加減になり、カネの出し入れがズサンになり、何よりも利益が落ちた。それは管理部門が弱体化し、組織に無駄と非効率がはびこりだしたことを端的に意味していた。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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