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ブログ・野口 誠一
第217回:社長のワースト批評(4)
2009年4月24日
手紙の文面から察する限り、Eさんの悩みは深いようである。が、こういう「運」だけの社長、Eさん流にいえば「目の前に受注があり、それが儲かるから事業を継続しているだけ」の社長がいかに多いことか。私は常々、「企業の目的は還元なり」と言ったり、書いたりしているが、こういう社長の耳には、それこそ「馬耳東風」。
なぜか。この社長は「社長」ではあっても、「経営者」ではないからである。社長と経営者の間には、想像を絶する距離がある。早い話が、社長になるには何の資格もライセンスもいらない。資本さえあれば誰でもなれる。が、経営者となれば、そうはいかない。経営者には明確な「使命感」が要るからである。
使命感とは、経営という天職をもって人様と世間様に、もっと広くいえば社会と国家に奉仕する──そういう「還元」の精神のことである。
具体的に言えば、自社が提供するモノやサービスをもってユーザー、消費者の役に立ち、その評価(社長はこれを「儲け」と解するが、経営者は「評価」と解する)をもって社員・従業員の生活を保障していく。
そして、堂々と税金を払って国家に貢献し、なおかつメセナ、ボランティア、フィランソロピー(いずれも企業による無償奉仕)と社会還元も忘れない──これが真の経営者の姿である。
残念ながら、Eさんの社長はしょせん、「社長止まり」である。そして、社長にはしばしば倒産が訪れるが、経営者には訪れない。
今回、紹介した「倒産の原因のワーストテン」は、中小企業の経営者がいま、どの位置にあるか、それは発展の方向を向いているか、そこを確かめるバロメーターといっていい。時々はこの「ワーストテン」に我が身を照らし、自己採点してみてはいかがだろうか。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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