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ブログ・野口 誠一
第218回:同族経営の功罪(1)
2009年5月1日
同族経営は難しい。血は水よりも濃しというが、それだけに水のようには淡々とはいかず、メリットの側にもデメリットの側にも、必要以上に大きくブレる。この「ブレ」の大きさを認識しておく必要がある。今回から同族経営の破綻と再生の2例を紹介しよう。
Fさんは平成7年、それまで7年間勤めた商社を辞め、兄の経営する梱包材料会社(東京・浅草)の営業を手伝い始めた。兄が特殊な紙に糸を入れた新製品を開発すれば、弟も商社時代のコネを活用し、新規取引を拡大するという2人3脚で、業容・業績は一気に拡大、二年後にはそれまで2億円台にすぎなかった年商が5億円台に跳ね上がった。
しかし、危機はいつも絶頂期にやってくる。とくに同族経営の場合、逆境時には結束するが、順境になるとタガがゆるむ。
Fさんの場合も、拡大する利益に目のくらんだ兄が、埼玉県下に別会社をつくった頃から、2人3脚の歯車が狂い始める。別会社は20人ほどのパートを使って特殊な紙袋をつくる工場で、兄嫁が社長となった。
だが、これが「2つの財布」をつくろうとする兄の画策にすぎなかったことは、やがてFさんの目にも明らかになる。というのも、資材や材料などの購入費を支払うのは浅草の本社、売り上げは埼玉の別会社に立つ。つまり、本社は支出用の財布で常に赤字、別会社は収入用の財布で常に黒字というわけである。
しかも、黒字の財布からは兄嫁が破格の給与を吸い上げていくのだから、Fさんが怒り心頭に発したとしても無理からぬことであった。これが兄弟不和の発端である。
そこへ兄夫婦と同居していた母親が兄嫁とそりが合わず、Fさんのところに飛び出して来たことが兄弟仲を決定的なものとし、Fさんは独立を決意した。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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