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ブログ・野口 誠一
第247回:立つ鳥あとを濁さず
2009年12月4日
立つ鳥あとを濁さずという。経営も同じである。事業に不運や失敗はつきものだが、問われるのはその後始末である。
同じ倒産でも、誠実に後始末をした者と、Dさんのように夜逃げした者では、その後の人生がまるで違ってくる。わが会員のなかでも、後始末組の再起は比較的早いが、夜逃げ組は再起そのものが難しい。
さて、Dさんである。いったん夜逃げはしたものの、私の説得を受け入れて奥さんのところへ戻り、200万円を持って弁護士の元へ走った。
債権者集会では怖い思いもしたようだが、やがて免責となったところで礼状が届いた。そこには「こっちへ戻ってきて本当によかったと思います。あのまま逃げていたらと思うとゾッとします」とあった。
その後、Dさんは仙台から奥さんの実家がある盛岡へ移り、塗装会社へ就職した。手に職を持つ者の強みである。
そして5年ほどが過ぎたある日、Dさんがいきなり八起会へ相談に現れ、「また会社をやることになりそうで不安です。断りきれないのです。困りました。私にできるでしょうか」と言う。
Dさんの会社の社長が急死し、息子が跡を継いだが怠け者、遊び好きでどうにもならない。業績は落ちる一方。それをカバーするために社員の給与、下請け職人の日当をカットしたからおさまらない。
そこでDさんに独立してくれ、職人はみなついていく、となったはいいが、Dさんは自信がない。それに、そんなことをしたら会社を裏切ることになる。迷いに迷った末の相談である。
私は即座に「おやりなさい。会社を裏切ることなぞ気にしてはいけません。気にすべきはお客さんと社員です」とアドバイスした。間もなくDさんは独立し、前の会社は潰れ、その地域に塗装会社はDさんの会社のみとなり、目下、絶好調。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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