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ブログ・野口 誠一
第279回:子どもたちの「真相」
2010年8月6日
八起会へ相談に来る経営者の大半はほぼ倒産寸前と言っていい。ぎりぎりまでもがいたあげく、どうにもならず駆け込んでくるケースが少なくない。なかには「倒産駆込寺」ということで、倒産してから相談するところという誤解すらある。とんでもない。八起会は「倒産防止の会」である。一つでも二つでも倒産を食い止めようと、顧問の弁護士や公認会計士の協力を得ながら、無料で経営相談を受けるボランティア団体である。
そんな私たちの願いは、「手遅れになる前に相談に来てほしい」という一事である。経営も病気同様、早期発見、早期治療が肝心である。手遅れとなってからでは、どんな名医も手の施しようがない。私たちも「もう少し早く来てくれたなら」と、ホゾをかむことしばしばである。そんな手遅れ組も、話が子どものことに及ぶと一様に泣き出す。ほとんど例外なくと言っていい。子どもに倒産の事実を告げるほど辛いことはない。ましてその子が進学や結婚を控えているとなれば、学費を出してやれない、破談になるかもしれないと、居ても立ってもいられない。その親心は私にもよくわかる。
私が倒産したとき、長女は短大卒業、長男は大学進学、次女は高校進学を控えていた。しかし一文なしになった私にはなんの力もない。私は子どもたちに両手をつき、「すまないが、お父さんはもう学費を出してやれない。進学したいなら、自分たちの力でなんとかしてくれ」と詫びた。子どもたちはなんにも言わず、やがてそれぞれにアルバイトを見つけ、長男は大学を、次女は短大を、自力で卒業してくれた。子どもたちが私の倒産をどのように受け止めたか、その本当のところを知ったのは、八起会創立30周年記念セミナーのときである。次女にスピーチしてもらったからである。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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