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ブログ・野口 誠一
第303回:高慢・過信にとりつかれて
2011年5月27日
私の放蕩は際限もなくエスカレートしていった。「呑む」「打つ」「買う」に「芸事狂い」と忙しく、いつしかゴルフ場へも通えなくなった。会社へ顔を出すのは遊びの金を調達するときだけだった。そして、「会社にへばりついているような経営者は伸びない…」と勝手な理屈をこね、会社の金を鷲づかみにしてはまた放蕩、その繰り返しだった。
そんな放蕩経営、乱脈経営にもかかわらず、会社の業績はいたって順調。私の放蕩などどこ吹く風とばかりに、儲かって儲かって仕方ない。なにしろイヌ、ネコ、クマなどの単純なぬいぐるみでも、つくる片っ端からアメリカ市場が丸呑みにしてくれるのだから、ただひたすら作ればいいだけのこと。当時は貿易摩擦などあろうはずもなく、「強いアメリカ」が「弱い日本」に輸入の手を差しのべ、あらゆるメイド・イン・ジャパンを受け入れてくれたのである。
要するに、私の事業など誰がやっても儲かったのである。しかし、私はそれを自分の才覚、経営手腕と信じて疑わなかった。遊び惚けている者は本当の自信がないだけに、どうしてもその穴を「過信」で埋めようとする。私もそうした1人だった。過信の怖いところは、それが「高慢」の温床になりやすいことである。経営者が、この高慢というガンにとりつかれたら、まず倒産は免れない。
だいぶ前のことになるが、八起会会員(500人)に「あなたの倒産の原因は何か」というアンケート調査を行ったことがある。その結果は「倒産の原因ワースト10」として公表しているが、その第1位は「経営者の高慢・経営能力の過信」だった。
このアンケートの結果からも、高慢や過信がいかに倒産へ直結するか明らかであろう。私は30代半ばで、この高慢・過信にとりつかれてしまったのである。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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