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ブログ・野口 誠一
第307回:倒産者の大半は社長未満
2011年6月23日
「自分に限っては倒産するはずがない」──。これは倒産者に共通する心理である。追い込まれれば追い込まれるほど、その思い込みは強くなっていく。冷静な判断力を失っていることもあるが、つのる不安と倒産の恐怖を打ち消したい、その心理が働くからである。私もその例外ではなかった。
繊維の輸出と沖縄の返還をはかりにかければ、糸より縄が重いに決まっている。そこへドルとオイルの二つのショックが重なれば、繊維の運命は定まったも同然、そこは誰の目にも明らかだった。だが、真の経営者と社長未満では、そこに抱く危機感がまるで異なる。
残念ながら私は後者の社長未満にすぎなかった。苦しくなればなるほど、「なあに、おれに限っては大丈夫」とうそぶけば、不安はたちまち消えていくが、そこには何の根拠もない。安易な、このタカのくくり方が社長未満の特徴である。
倒産者の大半は社長未満と言っていい。倒産したから社長未満なのではなく、社長未満だったから倒産を余儀なくされたのである。そのことは倒産の理由を問えば、直ちに分かる。大方の答えは「世界不況だから」「銀行の貸し渋りにあって」「リーマン・ショックのせいで」となるのが関の山。「自分に経営手腕がなかったから」という答えはめったに返ってこない。この倒産・外部要因説も社長未満の特徴と言っていい。
しかし、どのような経営環境下にあろうと、すべての中小企業が潰れるわけではない。そのことを思えば、外部要因説は言い訳にすぎない。倒産は経営者の内部から始まる。私はその典型と言っていい。私の会社が倒産したのは、日米繊維摩擦のせいでもオイル・ショックのせいでもない。ほかならぬ私が社長だったからである。私が社長未満だったからである。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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