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ブログ・野口 誠一
第312回:身にしみる家族の存在
2011年7月28日
悪いときには悪いことが重なるもの。私が倒産したとき、長男は大学進学を、次女は高校進学を目前に控えていた。しかし、無一文になった私に、学費を出してやる力などあろうはずがない。私は子どもたちに両手を突いて詫びた。
「お父さんは会社を潰してしまって、もう学費を出してあげられない。気の毒だが進学はあきらめてくれ。どうしても行きたいなら、アルバイトでもなんでもして、自分の力で行ってくれ。だらしない父親だと思ってあきらめてくれ」
ふんぞり返ることはあっても、人にアタマを下げたことなどめったにない私だったが、このときばかりは詫びるしかなかった。
すると長女が「お父さん、私が短大を卒業します。私が働いて妹の学費を出しますから、私と同じように短大までやって下さい。途中で結婚するようなことがあっても、学費だけはきちんと入れますから」と言う。
そして家内までが「いままで贅沢ができたのは、みんなお父さんのおかげですよ。今度はお父さんに恩返しをする番です。お母さんもパートでもなんでもして働きますからね」と言う。
私は何も言えず、うなだれるしかなかった。とめどなく涙が頬を伝っていく。こんな不甲斐ない父親を責めもせず、みんなが盛り立ててくれる。まさに地獄で仏、私は家族というもののありがたさをしみじみと知った。
こうして家族は宣言通り、それぞれの道を歩きはじめた。家内はデパートの食品売り場でパート、3人の子どもたちもそれぞれにアルバイト先を見つけ、私のせいで暗転した運命と必死に闘っている。
だらしないのは倒産のショックから立ち直れず、毎日アパートに閉じこもったきりの私だけ。何とかしなければと思いつつも、何ともならないのが倒産地獄である。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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