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ブログ・野口 誠一
第327回:祈りから得た経営の神髄
2011年11月14日
それは確かに声だった。仏壇の発する声だった。読者は「そんなバカな」と言うかもしれない。私だって信じられなかったのだから。が、その疑問もやがて氷解することになる。だいぶ後のことだが、ある雑誌で高名な宗教家と対談することになったとき、私は自分の経験した「奇跡」について、率直に問うてみた。と、彼の答えはこうである。
「それは奇跡でもなんでもありません。一心に祈り続ければ、その『意』の『乗る』日が必ずやってきます。祈りは『意乗り』なのですから」
私はこの言葉に納得した。仏壇の声は私の「意乗り」が通じたからに違いない。その声に導かれ、私はその夜、社長だった頃に思いを馳せた。たしかにテレンコ社員もいたし、不平不満を抱く社員もいたかもしれない。が、大方の社員は元気に、真面目に、喜んで働いていた。その姿を目にすることは、いかに放蕩社長の私でもうれしかった。そこに思いが至ったとき、私は一つの啓示を得た。
経営とは社員が嬉々として働ける環境、理念、システムをつくることではないか。しかし、自分はいま人に使われる立場だ。それならば自ら不平と不満の垣根をつくり、そのなかで辛い、苦しい、面白くないともがいているよりも、そこから飛び出し、嬉々として働くべきではないか。そこに気付いたとき、私の決心はすでに固まっていた。
「とりあえず明日一日は私心を去り、会社のために働こう。無私の心で上司や社長を喜ばせるために働こう」
翌日、私はこの決心を実行した。体はヘトヘトに疲れていたが、帰りの電車に揺られる心は充実感に満たされていた。この実行をもう一日、さらに一日と重ねるうちに、いつしか私の心から不平不満が去り、苦しさが消えていった。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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