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ブログ・野口 誠一
第328回:感謝の心が苦しみを消す
2011年11月21日
倒産してから足かけ5年、仏壇の声のおかげで、ようやく私から「憑きもの」が落ち、「当たり前の人間」になることができた。それまでの出勤ラッシュ、フィルム運びが何の苦にもならない。それはもう私だけの苛酷な運命ではなくなったのである。
そして、何の抵抗もなく「はい」「おかげさまで」が口をついて出るようになった。仏壇に掌を合わせても、一日の労働と糧、健康と幸福に感謝することはあっても、かつてのような「助けてくれ」「社長にしてくれ」などという、あさましい「くれ」「くれ」は跡形もなく消えていた。
思えば長い冬だった。普通の勤め人になるのに、普通の人の何倍も時を要した。それが私の長い放蕩生活の反動であることは言うまでもない。
が、冬が長ければ長いほど、春の喜びも大きい。私にとっては、それまで運命を呪い、不平不満をかこっていた心に、健康で働けることに対する感謝の念が芽生えたことが、何よりも大きな喜びだった。
何事につけ、感謝できるということは、その人にとって大きな財産である。八起会へ相談に来る倒産者のほとんどは、「銀行さえ融資してくれたら、倒産しなくて済んだのに」とか、「あいつの口車にさえ乗らなかったら、潰れなかったのに」と、銀行や誰かを恨んでいるのが常である。
それに対して私はいつも、「それは逆でしょう。銀行が融資してくれたら、あなたはもっと長く苦しみ、負債も大きくなっていたはずです」「誰かを恨むのはよしましょう。むしろ感謝すべきです。その人はあなたにあなたの弱点を教えてくれたのですから」と諭すが、彼らは一様に「そんなことはありません」といって耳を貸そうとしない。しかし、いずれ分かるときが来る、と思っている。私のように。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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