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ブログ・野口 誠一
第372回:無念だが安堵感も
2012年8月6日
Yさんの体験発表は、なおも続く。
──私は倒産を無念に思う一方で、これで資金繰りの苦しさやセールスの苦労、仕入れ先との難しい交渉からも解放される……という矛盾した安堵感もありました。
ただ、製造会社と販売会社、そして役員4人の自己破産手続きのため、弁護士費用や裁判所への予納金で1000万円ほどかかり、資金が底をついて従業員への給料をどうしても捻出できません。弁護士に相談し、国の立て替え払い制度があると教えられ、それを利用して給料問題はなんとか乗り切りました。
やがて裁判所から管財人が選出され、財産調査が始まり、私や会社宛ての郵便物はすべて管財人に転送されました。そして平成19年4月から、私が代表を務めていた販売会社の債権者集会(財産報告集会)が始まり、私の免責が確定したのが7月、会社も翌20年4月に同意配当を経て、全て終わりました。
こうして私は地位も財産も失いました。自宅ももちろん金融機関の根抵当権が設定されていましたから、出て行かざるを得ません。しかし、病弱の母親が同居していましたので、親戚から1500万円を借り、金融機関に根抵当権を解除してもらい、競売にかけず任意売却をお願いして、いまもその自宅に住んでいます。
倒産は厳しい現実です。私自身、25歳から45歳まで、心血を注いで働いてきた会社です。それが一瞬にして消えてなくなるのですから、自分の人生にムダの烙印を押されたような思いを禁じ得ません。でも、その原因をつくったのは私です。私の経営能力のなさ、早い段階で再建策を講じなかった罪です。創業した父にも、多大の迷惑かけた債権者にも、申しわけない気持ちでいっぱいです。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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