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ブログ・野口 誠一
第388回:「自振りゼロ」を決意
2012年11月26日
(労働組合との15年戦争には勝利したが、その間、Aさんの経営も変質していく)
──話を元へ戻します。私が日商岩井(現双日)へ手形のジャンプをお願いし、人材の派遣など3条件を受け入れ、再建に着手したことはすでに触れました。この決断が功を奏し、翌昭和54年1月から、月次で黒字に転換しました。その後も順調に黒字が続き、心にも少し余裕が持てるようになったところで、ひとつの転機が訪れました。
その頃、T銀行の観劇バス旅行があり、私も家内とともに参加しました。途中のサービスエリアでひと休みになったとき、T銀行の支店長と話す機会があり、私が例の手形のジャンプで苦労したことを話したところ、彼が「どうして苦労したかわかりますか」と言う。私が「わかりません」と言うと、彼はさらにこう言いました。
「手形を振り出していたからですよ。手形さえ振り出さなければ、不渡りはありません。自振りしないような経営にしてはどうですか。計画的に努力すればきっとできますよ」
これは当たり前のことです。わかりきったことです。しかし、そのときの私にはズシリとこたえました。
手形決済のために、血相を変えて資金繰りに奔走した苦労、手形ジャンプを依頼せざるを得ないときのみじめさ、そういう経験をした者にしかわからない感覚だと思います。手形を振り出すから不渡りになる。不渡りになれば倒産しかない。その当たり前のことが、その旅行の間中、私の頭から離れませんでした。
そして旅行が終わったとき、私の心ははっきりと決まっていました。10年間で自振りをゼロにするという決意です。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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