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ブログ・お勧めビジネス書レビュー
デキるトップのすぐ効く!しかけ(白潟敏朗・著、大和書房)
2009年5月28日
「熱何何(あつなんなん)」、「PAWPAW(パウパウ)」―一体何のじゅもんかと問いたくなるような言葉だが、これは中小中堅企業専門経営コンサルティング会社・トーマツイノベーションの白潟敏朗社長の著書『デキるトップのすぐ効く!しかけ』に出てくる用語だ。「分かりやすく、簡単で楽に継続できて、効果のあるコンサルティング」を信条とする同社長。同著も全体を通して平易な言葉で書かれているとともに、冒頭のキーワードのようにインパクトのある言葉で「経営のキモ」を分かりやすく伝えてくれる。
白潟氏
同著では、経営理念や経営方針ではない、「社長のおもい」、「社長のこだわり」を伝えることの重要性を説く。では「おもい」、「こだわり」とは何か。
「たとえば、『ウチ以外でも通用する社員に育てたい』とか、物流企業であれば『3PLで荷主の課題を解決するような仕事をしたいな』とか何でも良い。いきなり3PLと言うのも難しいというのであれば、社員が配達先に荷物を届ける際に、笑顔で『いつもどうもー』と一言あいさつするところから始める」
しかし、社員にそれを実践してもらわなければならないのに、トップはその思いを伝え切れていない―同著ではその理由を明らかにするとともに、それを解決する方法として、冒頭の「熱何何(熱い思いを何度も繰り返し、何故かを訴える)」、「PAWPAW(Passion、Again、Why=燃えるおもいで訴える、くり返し訴える、なぜ訴えるかを説明する)」を紹介している。
具体的な「しかけ」としては、社員との日々のちょっとした会話の進め方に始まり、幹部会議や合宿の開催などが奨励されているが、特に前半に書かれている内容は、受け取り方によっては「簡単」と思う人もいるかもしれない。
「大切なのはしっかりくり返すこと。くり返し行うには面白そう、やってみようと思えるための『分かりやすさ』や『笑いの要素』がないと」
同著でも紹介されているが、ある大企業では1000人規模の幹部会議が、何十年も続いているという。
「この企業も、最初から大企業だったわけではない。継続して行うことで思いが共有され、一体感が生まれた結果」
同著で取り上げている「しかけ」は、トーマツイノベーションが主催する各種セミナーで紹介されているものの一部。なお、同社が現在力を入れている会員制社員教育サービス「イノベーションクラブ」は、月額2万6250円―5万2500円(従業員数によって異なる、別途入会金5万円)、年間750回以上のセミナーが人数・回数問わず受けられるという画期的なサービス。すでに1700社以上が参加しているという。
「人気があるのは中堅社員・管理職研修。ほかにも社超研修、ロジカルシンキングや事業継承についてなど、職域問わず、さまざまなセミナーをご用意している」
回数も無制限のため、単発ではなく、継続的に受けることが可能。同社のセミナーを経て、大きく様変わりした会社もあるとか。
「ある会社は、それまで一度も中期経営計画を立てたことがなかったのに、セミナーを受けてから経営者の考えが変わった。社長と社員が一緒に『夢計画』を作ったことで、全員が利益マインド・ローコスト姿勢を持つようになり、『攻め』の作戦を立てられるように。結果として、赤字経営が黒字に転換した」
世のため、人のために仕事がしたい―そんな思いから、「小難しい」「机上の」コンサルではなく、「本質」「効果の出る」コンサルを志すようになったという同氏。「『しかけの製造業』を目指している」と語る同氏から見た物流業界は。
「世の中に必要とされる、一生なくならない仕事。届け先の人は、物が運ばれてくるのを必ず待っている。『自分を待ってくれる人がいる』というのは幸せなことであり、うらやましい。けっして自らの仕事を卑下することなく、社員におもいを語りかけて欲しい」
▼「デキるトップのすぐ効く!しかけ」、白潟敏朗・著、大和書房、1300円(税別)
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