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1の力を10倍にするアライアンス仕事術(平野敦士カール・著、ゴマブックス)
2009年6月10日
「一人では不可能なこと」を「他人を巻き込んで実現すること」…この「アライアンス仕事術」を唱えるのは、iモード「おサイフケータイ」の発案者である平野敦士カール氏(ネットストラテジー社長)。同氏は、著書「1の力を10倍にするアライアンス仕事術」の中で、ドコモ、ソニー、三井住友カードといった大企業を動かして同プロジェクトを成功させていった経緯を明らかにし、その成功の要因ともなった、同氏の持つ「アライアンス仕事術」という考え方について詳しく説明している。
平野氏
東京大学卒業後、日本興業銀行を経てNTTドコモに転職。輝かしい経歴を持ち、広い見識を持つ同氏だが、「一人でできることには限界がある」と言い切り、複数の人が得意分野を活かしてプロジェクトを動かしていく「アライアンス仕事術」を推奨する。
「自分ができることとできないことを認識し、目的に応じて、同じ方向を向いている人を2人、3人と集めていく。自分の『壁』を壊して人を巻き込んでいくことで、不可能に思えたようなことも実現していく」
1人でできないから諦める―そのことを同氏は強く批判する。そして、新たなビジネスを生み出す「アライアンス仕事術」のポイントとして、「いろんな考え方の人がアライアンスに加わっていけば、自分のなかにある固定観念が崩され、新しいことを発想できるようになります」と説く。
「自分の力に限界がある、さまざまな外的環境に取り囲まれているといった状況の中、パラダイムシフトが必要」
ただ、重要な点として忘れてはいけないのが、アイデアの発端となった人が「このビジネスを実現したいんだ」という確固たる信念を持ち、リーダーシップをとること。たくさんの人を動かすだけに、誰かが舵取りを行わないと収集がつかなくなってしまうからだ。この「中心人物」としてプロジェクトを動かしていくために重要なのが、「自分がプラットフォームになること」だという。
「googleやiモードを見ても分かるように、ビジネスにしても、プラットフォームとして人や情報を集められる戦略が伸びている。個人も同じで、自分を媒介に人を集められるようになることを目指すべき」
現在は、経営コンサルティングやベンチャー投資などを手がけている同氏。物流については、「21世紀に最も伸びる業界。これからのビジネスのキャスティングボードを握る存在なのではないか」と見ている。
「eコマース市場が急激に伸びているが、どんなにIT化が進もうと、『運ぶ』というリアルの部分は絶対に残るもの。いま、どの通販事業者と話しても、いちばんの課題としているのが物流の部分」
ただ、だからといって、物流をやっていればどんな事業者も伸びるというわけではない。拡大するためには、「ITとの連携」と「人の根元的な欲求を満たす視点」が必要と説く。
「技術の革新によって、根元的な欲求は何かというビジネスの基本を忘れてしまうことが多くなっている。たとえばレコード盤を作っている会社は、『同業他社に負けないように』と割れない盤や透明な盤をせっせと作ったが、音楽業界の外にいるアップル(iPod)に負けてしまった。人々が求めているのは『音楽が聞きたい』ということで、形態はCDでもレコードでも良かったのに、それを見失ってしまったという例だ。物流で言えば『早く欲しい』という欲求を満たすためにどうするか。このニーズをつかむのに、ドライバーが毎日配達先まで行き、『最前線』にリアルに触れているというのは大きな強みになると思うのだが」
「物を運んで欲しい」と考える人から必要とされ、届け先との接点も豊富に持つ物流事業者。他業界・他社との「アライアンス」も生まれやすい存在と言える。
「まず、巻き込む前に『巻き込まれる』ことも重要。能力も大事だが、何はなくとも相手から『一緒に仕事がしたい』、『居心地が良い』と思わせ、何かあった時に声がかかる存在でありたいもの」
▼「1の力を10倍にするアライアンス仕事術」平野敦士カール・著、ゴマブックス、1500円(税別)
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