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会社のお金はどこへ消えた?(児玉尚彦・著、ダイヤモンド社)
2009年6月30日
税理士である児玉尚彦氏が、「1000人以上の社長のお金のノウハウを、約十年かけて蓄積してきた成果」としてまとめたのが「会社のお金はどこへ消えた?”キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」だ。同氏は、経営の肝を「お金の出入りをしっかり押さえること」だと話す。
児玉氏
「会社の収支をしっかり押さえること。いくら入って、いくら出て行っているのか。予定は立てているけど、それが実際にうまく行っているのか。『何とかなるだろう』という経営者も多く、これでは最近増えている(個人の)カード破産と同じ」
同著では、会社のお金が「消える」(ように見える)トリックや、売上が増えてもお金が足りない理由などが明かされていく。心当たりがあり、「なるほど」とうなずく経営者も多いかもしれない。
「お金が『消える』経路は(1)運転資金、(2)設備投資、(3)支払、(4)返済、(5)損失配当の5つしかない。『消えていく』と感じたらこの5つを検証し、ストップするお金の流れを止める必要がある」
たとえば(3)の支払。入金よりも先に支払が来ると、「会社のお金はいつも底が見える状態のまま」。まずは、取引先との支払い条件を整理することが重要だと説く。
自社の経営状態がうまくいっているのか―これを客観的に見るためのものとして、会社の財務バランスとお金の流れを一つの図に表す「キャッシュバランス・フロー」シート(※表紙参照)を提唱している。バランスシート上の現預金、それ以外の資産、流動負債、固定資産、純資産のうち、どれが大きくなっているかを把握し、会社のお金がどう巡っているかを見るためのものだ。どこかが不自然に大きくなり、バランスが悪くなっていたら、立て直す必要がある。一度バランスが崩れると、抜本的な施術が必要となる場合もある。
「一度ベンツに乗ってしまうと、カローラには戻れないという人が多い。多くの経営者を見てきたが、最後は『頭を下げられるか』。取引相手に対して支払いを遅らせてくれと土下座して、ケロッとしている社長さんもいた。『会社のために』、『社員のために』という価値基準を持ち、カッコつけずに行動できる人は強い」
また、同著を読んだ経営者の中で反響が大きいのは、「無借金経営が最高ではない」と述べているくだりだという。詳細は本を読んでいただきたいが、「借入金はどこまでしても大丈夫か?」など、突っ込んだ部分にも触れていることが読者からも好評とのこと。
「もともとこの本を書いたのは、会社の存続に関わる致命的な失敗はしないで欲しいという思いから。借入金や役員報酬額の決め方について記述したことで、『目安』が欲しかった経営者に響いたのだろう。私が学ばせてもらった経営者のみなさんも、長い経験の中では小さな失敗はしている。でも、『ここまで(お金を)使っても大丈夫だ』というラインさえ守れば、軌道が少しずれても取り戻せる。結局、どんなビジネスをしていても、基準はお金。会社の評価は『利益』と『売上』でされる。そこを見誤らないで欲しい」
なお、同氏は「経理合理化プロジェクト」を主宰している。企業の経理として働く人に対して財務や経営の知識を身につけさせ、経営の意思決定にも携われる人材へと育てようというプロジェクトだ。アウトソーシング化の流れもあり、「経理事務」という職業はなくなっていくだろう、とも。全国でキャッシュフローの改善を支援するためのセミナーも開催している。
▼「会社のお金はどこへ消えた?」児玉尚彦・著、ダイヤモンド社、1500円(税別)
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