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    小さな会社のブランド戦略(村尾隆介・著、PHP研究所)

    2009年7月8日

     
     
     

     先が見えない不安な時代であるいま、「経営ノウハウ」や「スキルアップ」よりも、「何のために働くのか」という「仕事観」の醸成が求められている。「お金のため」という人もいれば、「家族を養うため」という答えもあるかもしれない。果たして答えは?


    『小さな会社のブランド戦略』の著者であり、スターブランド社の共同経営者として活躍する村尾隆介氏は、「生き方」と「働き方」が一致した、笑顔で仕事を楽しむ社会人を増やすこと―これを自身のミッション(使命)として掲げる。その使命を果たすべく、同氏は「小さなブランド」と呼ばれる会社を誕生させるために、日夜奔走している。
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    村尾氏
     同氏のように「ミッション」を持ち、それに向かって邁進できる会社は、自ずとブランド化されていく―というのが同氏の持論だ。同著の中で、ブランド化に成功した「小さな会社」がいくつも紹介されているので参考にしていただきたいが、ブランド化とは、名刺やロゴを変えれば良いというものではない。
    「まずは自社の『存在意義』を突き詰めて考えてみること。他社とサービス内容に差がないような業界であっても、『業界のこういう部分を変えてみよう』とか、『これをやって周りを驚かせよう』とか、自分がやるべきことが何かしらあるはず」
     この「存在意義の明確化」という作業をするのに、同氏は「インタビューごっこ」を勧める。
    「相手との対話の中で『WHY』と『BECAUSE』をくり返していくと、『なぜこの仕事をすべきなのか』という問いに対する自分の答えが研ぎ澄まされていく。『ごっこ』のような遊びで良い。ただしこの時、『事業を通じて社会に貢献していく』といったような『玉虫色の存在意義』では意味がない。仕事を通じて社会貢献するのは当然のことで、『これを成し遂げるために会社が存在している』という明確なものを見つけるべき」
     「存在意義」が固まれば、あとはブランド化していく作業だ。
    「ブランドとは一言で言うと情報発信のこと。『こういう光を放つ会社になりたい』というイメージを明確にし、メッセージを発信すれば良い。たとえば、いま理不尽な要求をしてくるような嫌なお客さんを持っているとする。それは、あなたがそういうお客さんを引き寄せるようなメッセージを発信してしまっているということ」
     興味深い例を教えてくれた。ヨーロッパから木でできた高級おもちゃを輸入し、ネットで販売していたある会社の話。当初は富裕層の家庭を中心に順調に売れていた。しかし、競合が出てきて競争が激化する中で、価格を引き下げてしまった。すると、起こったのはクレームの嵐。少しの傷や箱のゆがみで文句を言ってくる顧客が増え、それに対応しているうちに利益も上がらなくなってしまったのだという。これは、価格を下げることによってそういう客を引きつけてしまい、悪循環に陥ってしまったということに他ならない。
    「『どんなに低い価格でも仕事を引き受けます』というのと、『徹底してお客さんを喜ばせます』というメッセージでは、引き寄せられるお客さんは確実に違ってくる」
     「嫌なお客は断る」という決断をすれば、確かに一時的に売上は下がり、ダメージも受ける。しかし、メッセージを正しく発信し続けることで、次第に顧客、資金、スタッフ、情報、支援、チャンスなど、あらゆる物事が引き寄せられ、ビジネスも軌道に乗る。これが「ブランド化」だ。
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    「ブランド化」が成功すれば、顧客、資金、スタッフ、情報、支援、チャンス…全てを引き寄せることができる
     なお、「メッセージの発信」については、あまりコストをかけずに始められるものもある。たとえば、FAXのレイアウトを整える、電話応対をきちんとする、キレイなユニフォームを揃える―まずはこれらを変えるだけでも、取引先に「こういう会社です」とアピールするには充分だ。
    「ブランド化しやすい業界の条件は、『職人気質、家族経営、価格設定があいまいであること』」
     他がやっていないから、少し変えただけで目立つことができるというわけだ。まさに物流業界が当てはまると言えよう。
    「期限を決めて、プロジェクトにして取り組むと良い。中には新しい取り組みに付いてこない社員も出てくるが、それは割り切ること。仮にその人が辞めてしまったとしても、新しく入ってくるのは、築き上げた『ブランド』に賛同している人。この『血の入れ替え』が済む頃には、非常に強い組織になっているはず」
     冒頭で述べた通り、いまは不安が多い時代。そんな時代だからこそ「小さなブランド会社」が求められる。同氏が講師を務めるセミナーはいつも盛況だという。
    「いま人が集まるのは、有名であるとか大きい企業よりも、小さくてもミッションを持ち、社員みんながイキイキと働いている会社。いまは不景気だが、だからこそ次に浮上する時までにブランド化を進め、会社を『キャラ立ち』させておくことが必要」
    ▼「小さな会社のブランド戦略」、村尾隆介・著、PHP研究所、1200円(税別)
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