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ギスギスした職場はなぜ変わらないのか(手塚利男・著、ナナ・コーポレート・コミュニケーション)
2009年7月30日
自分の成果にだけ関心があり、他人の仕事を手伝うつもりはない。困っている人がいても見てみぬふり。一緒に働く同僚が信じられず、互いに鎧を身に付け、深い付き合いは避ける。会話もない、毎日が楽しくない…そんな、居心地の悪い「ギスギスした職場」が増えているそうだ。あなたの会社はどうだろうか。
手塚氏
『ギスギスした職場はなぜ変わらないのか』は、このような「風通しの悪い」職場がなぜ生まれるのかを分析した上で、それを改善するには、会社の「土台」とも呼ぶべき「風土」そのものの改革が必要だと説く。
著者の手塚利男氏は、スコラ・コンサルトで「プロセスデザイナー」として企業風土改革を手がけている。その前は、いすゞ自動車の風土改革運動を推進した経歴を持つ。同著では、いすゞでの成功事例も取り混ぜつつ、改革のポイントが分かりやすく説明されている。
「風通しの悪い職場というのは、いわば『油が切れた』状態。部門間や上司・部下などの『つなぎ目』の部分がうまくいっていないことが多い」
その原因として「成果主義の反動」、「世代間ギャップ」、「仕事のスピード化・効率化」、「コスト削減策による管理職の不在」などが挙げられている。
これらを変えるのに有効と思われるのが「仕組みや制度の変更、新たなルールの導入」だが、同氏は「それでは効果は薄い」と警鐘を鳴らす。大切なのは、「環境」、そして「風土」を変えること…そのメソッドとして、「(心の中の)『カベ』を低くする」、「『情報』の流れと中身を変える」、「思いをネットワークで『共有』する」など、同著では「7つのフレームワーク」が紹介されている。
ここで大事になるのが、「誰が音頭をとって改革を進めるのか」ということ。同著では「キーマン」という言葉で表されており、「たった一人からでも始められる」とある。その「一人」が経営者であれば改革も進みやすい。ただし、社長が推進する改革に関する業務を、社員が「やらされ仕事」と感じないことが前提となるが。
「ポイントは『本気になること』。経営者や役職者であれば、自分の言動はまわりに影響を与えることができる。いすゞの場合も、当時の社長が『自ら変わる』と宣言し、積極的に社員のもとを訪れて対話を重ねることで思いを共有していった。また事業方針の面でも乗用車事業からの撤退を決めるなど、赤字脱却を目指すという目標に対しての本気度が伝わってきた」
企業改革が「売上向上」に直結するかと言えば、必ずしもそうとは言えないかもしれない。しかし、「活気あふれる職場で楽しく働く」ことが、社員一人ひとりの、そして組織としての生産性を大幅に向上させることは確かだ。当時、いすゞが企業改革により黒字化を果たしたのも、自由にモノが言える雰囲気のもと、対話が増え、部門間の連携が強まった結果と言える。
ギスギス「していない」職場とは、「人間っぽい仕事の進め方」ができている職場とも言えるだろう。たとえば、メールでやりとりするより、直接話した方が話が早いことも多い。部門間の業務の引き継ぎも、「この部分はこうなっています」と少し説明を加えるだけで、後々の確認や手直しなどの二度手間が不要になることもある。「無駄を排除する」ことが最善とされがちな時代だが、「人間味のある仕事(職場)」こそが、最も効率的なのかもしれない。
なお、巻末には、31個の「職場が活性化する『すごい仕掛け』」が紹介されている。「月例会議などで誕生日の人を紹介する」、「お土産やお菓子を配って歩く」、「会議の司会を当番制にする」など、すぐに実践できるものばかり。「対話があふれる会社」を目指すなら、何か一つでも良いので取り組んでみてはいかがだろうか。
▼「ギスギスした職場はなぜ変わらないのか」手塚利男・著、ナナ・コーポレート・コミュニケーション、1300円(税別)
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