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顧客を動かす!インタビュー式営業術(竹林篤実・著、ビジパブ)
2009年9月16日
「営業イコール話術」と考えがちだ。しかし、竹林篤実氏は、その真逆とも言える「インタビュー式営業術」を提唱する。自社サービス(製品)のメリットを「話す」のではなく、「聞く」ことがメインの営業とは一体どういうことか。竹林氏は、「相手に伝えるべきことを伝えるために、まずは『聞く』」と説明する。
「私は『コードを合わせる』という言い方をしているが、畑も違えばバックボーンも異なる人と理解し合うには、まず共通のモードにならないと。具体的には、相手の求めている情報や、判断基準を明確にし、こちらが話す『きっかけ』を見つけること。営業というと、どうしても『とにかく勧めなくては』という強迫観念にかられて話し続けてしまうが、まずは相手のことを理解しないことには、伝えるべきことを伝えるのは難しい」
「売り込み」ではなく「聴き込み」―。この営業術を実践している企業として、同著ではキーエンスの営業手法が紹介されている。超高収益企業として知られる同社だが、営業マンが顧客の要望を徹底的に聴き込み、そのウラにある「潜在的なニーズ」までを掘り起こすことが、「世界初、日本初、最低でも業界初」という商品群を生み出す原動力になっているという。「付加価値の提供」というよりも、「不」を見つけることで顧客のニーズを満たすのである。
「何かを伝えたかったら、相手に伝わるように言わなければならない。そのためには『どう言えば伝わるか』をまず把握するべく、『教えてください』という姿勢で臨むこと」
しかし、ただ漫然とインタビュー(商談)に臨んではいけない。同著では、商談の前には顧客の徹底的な下調べが必要だと述べられている。インターネット(企業HPや「2ちゃんねる」まで)や、IR・採用の情報までとことん調べることで顧客の抱える「問題」をあぶり出し、それに基づいた「仮説」に沿ってインタビューを組み立てていくのだ。詳細は同著に譲るが、この過程を踏むことで、サービスを売り込む「営業」ではなく、問題意識を共有する「パートナー」になることができるという。
なお、この営業術は、「お客様はみんな話したがっている」という前提のもとに成り立っている。基本的に人は「聞く」よりも「話す」ことが好き。だから、「顧客」としていつも一方的に営業トークを浴びせられている人も、適切な質問を投げかけさえすれば堰を切ったように話し出す。そうなれば、あとは「どうして欲しいのか」をうまく引き出せば良いというわけだ。
裏を返せば、営業マンも話すのが好き。「つい相手の話をさえぎって自分が話し出してしまう」聞くのは苦手」という人も多いことだろう。しかし、竹林氏は、「性格などにもよるが、基本的には練習さえすれば『インタビュー営業術』は誰でもできるようになる」と話す。営業やビジネスだけでなく、日々のコミュニケーションスキル向上にも役立ちそうなその練習法とは。
「お勧めなのは、子どもの言うことを聞くこと。『今日はどうだった?』『ビミョー』で終わってしまう会話を、『どんなふうに聞いたらもっと話してくれるだろうか』と考えることで聞く力がつく。しゃがんで目線を合わせるのも良い。また、結婚されている方は、奥さんの話を聞くのもお勧め。話の中に面白さを見つけようとして欲しい」
同著でも紹介されているが、「レビットのねじの穴」という有名な逸話がある。「お客様がドリルを買うのはなぜか。お客様はドリルがほしいから買うのではなく、穴を開けたいから買うのだ」。さて、あなたのお客さんの「穴」は何か―それを見つけるために、まず「聞く」ことから始めてみてはどうか。
▼「顧客を動かす!インタビュー式営業術」、竹林篤実・著、ビジパブ、1300円(税別)
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