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COACHがGUCCIより売れてるって、本当ですか?(鈴木宣利・著、ゴマブックス)
2009年10月15日
COACH、スターバックス、任天堂DS、iPod、イケアなど、多くの人に支持されるヒット商品やサービスの数々。これらを観察し、そこに隠された「マーケティングの仕組み」を理解しようというのが鈴木宣利氏の『COACHがGUCCIより売れてるって、本当ですか?』だ。
「自分自身、若い頃にマーケティングの専門書を読んだが、難しくて分かりにくかったという経験がある。そこで、マーケティングを知らない人向けに、イメージしやすい身近な事例を通して、マーケティングのベーシックな考え方を分かってもらえるものを―と思って執筆した」
たとえばタイトルにもなっている事例。中堅ブランド・COACHが老舗ブランド・GUCCIよりも売れている理由を、高級ブランドが狙わない層をあえて狙った価格戦略を採るという「ポジショニング力」と分析。また、詳しくは同著を読んでいただきたいが、任天堂DSの人気の理由は、「コンセプト力」、iPodのヒットの理由は「高付加価値なパッケージ力」―など、同氏の取材を通じて明らかになった、それぞれの事例についての「ヒットの裏側」が明かされている。
「成功している企業には何かしら特徴的な戦略がある。価格力、物量、あるいは圧倒的な流通網のおかげかもしれない。これらの企業に関する情報を集め、一つひとつつぶさに観察することで、何がヒットの要因となっているかが分かる。美味しい料理が何から作られているのかを知るようなもの」
同著の各章の終わりには、『マーケティング・センスアップの視点【考えてみよう】』というコーナーが設けられている。章の中で説明された「ヒットのための素材」が、「自社に置き換えるとどう活かせるか」を読者に考えさせる作りになっている。
「本を読んで『なるほど』で終わってはいけない。視点を身につけた上で、自分自身の頭で考えることで力がつく。特にいまは、A社の成功事例をB社が真似してもうまく行かない。自社に合ったやり方を見つけることが重要」
そのために行うべきこととして、同氏は「まず自分を知ること」と力説する。
「自社の商品・サービスを、お客さんが買ってくれる理由は何なのか。たとえばコーヒー屋さんであれば、自社の強みが『香りの良さ』なのか、『低価格』なのか、『商品力』なのかによって、採るべき戦略は違ってくる。自分自身を知ったら、次は競合を知ること。市場環境によっては、自分が強みと思っていた部分が、次の日には弱みになっている可能性もある。そして、3つ目はお客さんを知ること。つまり、市場ニーズを探るということ」
自分自身・競合・顧客を知った上で、身につけたマーケティングの知識をもとに戦略を練る―非常に「理論的」と思える作業だが、同氏は「大事なのは直感」とも付け加える。
「先行き不透明ないま、データや実績から得られることをくり返しても、同じ結果が出ないこともある。確かなマーケティングを行うには、『理論』と、目には見えないものを感じ取れるような『感覚・感情』の両方を磨くことが必要」
「センスを磨く」ための努力として、同氏は人間観察や、電車の中吊りの広告コピーのチェックを欠かさないという。あなたも、まずはできるところから始めてみてはいかがだろうか。
▼「COACHがGUCCIより売れてるって、本当ですか?」鈴木宣利・著、ゴマブックス、1200円(税別)
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