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新「根性」論 「根性」を超えた「今どきの根性」(辻秀一・著、毎日コミュニケーションズ)
2009年11月10日
100年に1度の大不況、「気合い」や「根性」で乗り切れるのだろうか―この問いに「NO」を突きつけ、旧来、日本人が大切にしてきた「根性」に置き換わる新たな「心のありかた」として「新根性」を提唱するのは、スポーツドクターの辻秀一氏だ。同氏の専門領域である応用スポーツ心理学の考えをもとにしたもので、同著では「時代に即した生き方」と表現されている。イチローや北京五輪の女子ソフトボールチームなど、「一流」と呼ばれる人々が持つという「新根性」とはいかなるものなのか。
同著によると、「自分らしく、元気で、パフォーマンスも高い心の状態」を、応用スポーツ心理学の世界では「フロー(FLOW)状態」と呼ぶという。同氏は、このフロー状態を自ら作り出していく意志や力を「新根性」と呼び、その概念の定着をめざしている。
「世の中がうまくいかなくなったいま、『心』の重要性に気づく人が多いことを感じている。そもそもなぜうまくいかないかというと、ほとんどの組織が、めざすべき結果ありきの『結果エントリー』だから」
求める「結果」を出すために、「パフォーマンスを上げろ」と上から言われる。言われた者にはプレッシャーやストレスがかかり、元気がなくなり、パフォーマンスが落ちる。当然、求める結果は得られない―というわけだ。
「最高のパフォーマンスを発揮できる『フロー状態』をまずめざす『心エントリー』にすれば、結果は自ずとついてくる。結果エントリーと心エントリー、どちらを選ぶかで人生も変わってくるはず」
「結果を求めない」―シビアなビジネス社会に生きる人間からすると、ともすると受け入れ難い考えかもしれない。しかし、大手を中心に、「心」の重要性を理解し、「フロー理論」を全社的に導入する企業も出てきているとか。同氏は、「パラダイムシフトを起こす必要がある」と警鐘を鳴らす。
「新根性とは、分かりやすく言うと『ライフスキル』のこと。脳の役割には生命維持、認知、知識の蓄積などがあるが、特にビジネス社会では、このうち認知や知識の部分ばかりが重要視されてきた。これらももちろん重要だが、とらわれ過ぎると判断や行動の足かせになることもある。たとえば、失敗すると分かっていても、知っていることや経験したことのある選択肢を選んでしまう。なぜなら、何も考えずにその選択をしたほうが楽だから。これからは、知識や経験に支配されない、『揺らがない』心をつくらなければならない」
同氏は「感情が『揺らぐ』のは人間として当然。そうならないように訓練し続けることが大事」とした上で、スポーツやピアノと同様、新根性もトレーニングで身に付くことを力説する。常に自分をフロー状態に持っていけるようにするための「心の訓練」。これまでにしていなかった脳の使い方をするため、慣れるまでは大変かもしれない。しかし、「新根性」を身につけた個人、あるいはそうした人の多い「フロー」な状態の組織になれば、会話が増える、会議の質が上がる、チームワークが良くなる、アイデアが出やすくなる…など、数えきれないほどの効果が得られるという。
「高度成長期のように、昔ながらの根性論で『がんばれば(会社が)成長していける』という時代ではなくなった。さらに言えば、『そこそこ食べていければ良い』という人や会社がやっていけるほど甘くもない。そういう意味で、いまこそ求められるのが新根性」
▼『新「根性」論 「根性」を超えた「今どきの根性」』辻秀一・著、毎日コミュニケーションズ、780円(税別)
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