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ブログ・高橋 聡
第178回:新型コロナウィルス対策 社員の休業について(1)
2020年7月23日
このシリーズでは、新型コロナウイルスへの対策に関し運送業経営者が押さえておきたい労務管理上のポイント、知っておきたい事項について説明してまいります。
弊社のお客様においても、荷主の工場が閉鎖し物流が減ったため数人休業させる、あるいは外国からの貨物便を扱う会社で荷物が少なくなり社員を休業させたい、といった問い合わせを受けることが増加しています。
このような場合に、経営者としては、どのようなことに留意し対応することが必要でしょうか。
まず、「労働基準法」において、「使用者の責に帰すべき事由により休業した場合には、休業手当として平均賃金の6割以上を支払わなければならない」とされています。
今般の緊急事態宣言に伴う都道府県知事の休業要請で、「物流サービス」は対象外とされており、業務継続の対象とされています。生活必需品である物資の供給を担う事業であるためです。「スポーツクラブ」など休業要請の対象となっている事業で社員を休ませる場合は「使用者の責めに帰すべき事由」と言えないために「休業手当」支払いは不要、ということになりますが「物流サービス」関連事業は要請対象外のため「休業手当」支払いが必要ということになります。
なお、休業要請の対象外事業であっても、コロナの影響で荷主の工場が休止した場合などに運送会社の社員に休業をさせることが、「使用者の責めに帰すべき事由」に該当するか否かは議論があるところです。経営者の感覚としては、休んでもらっているのは会社が悪いのではなくて「新型コロナウイルス」の影響だ、というのが正直なところだと思います。
しかし、今回のような国難ともいえる状況のなかで、社員の生活の維持、事業の継続と存続を検討した場合には「雇用調整助成金」などの助成を受けながら雇用を維持していくことを第一に考えるべきでしょう。
ただし、「物流サービス」はあいまいな概念であるため倉庫や付帯作業などがどこまで含まれるのかなど疑問が生じる部分があります。ツーマンによる運行や屋内型の作業場などいわゆる3密の空間での作業の場合はどうなるのか、事業主に義務付けられているアルコールチェックそのものが「感染リスク」が相当程度高い行為になるので、休業対象外の業種であるとはいえ細分化してみると感染リスクが高い場面もあります。
よって、経営者としては休業要請対象外の業種であるとはいえ、このような社員や家族の感染リスクに対する対策は必須であり、休業させる場合の休業手当は法的な支給の必要性有無に関わらず支給し、支給した場合は「雇用調整助成金」を活用することが現実的な対応策であると考えます。
なお、荷物は通常通りであるが、社員から「感染するのが嫌なので働きたくない」といった要望も出てきています。このような場合の対応に関しては次号で取り上げます。
(休業手当支給の必要性等については厚生労働省のQ&Aもご参照ください)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q4-3 -
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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