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ブログ・高橋 聡
第208回:令和時代の運送業経営 労務トラブル実例(4)
2021年10月28日
【労務トラブル実事例編】④
「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウィルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。
今回も前回に続き、運送会社で実際に発生した「労務トラブル実事例」とその対応策について説明してまいります。
1.労務トラブル実事例
⑴トラブル内容
A運送会社では慢性的なドライバー不足に悩んでおり、仕事の依頼はあるもののドライバ―不足で泣く泣く仕事を断る状況が続いていた。社長Bはまず採用広告の内容を改定し、「未経験者への研修体制が充実」していることなどを掲載、また荷主への運賃、配送条件変更に取り組み、時間短縮や日給額保障等労働条件改善に努力してきた。また、HP改定、採用広告を含め概ね100万円のコストをかけドライバ―採用改革を進めていた。
しかしながら、応募はポツポツしか来ない。面接後、辞退者が続出したため原因を調査したところ、転職サイトの口コミに「なんの福利厚生もない会社」「研修内容がいい加減、先輩社員は能無し」といったネガティブなコメントが書き込まれている事が発覚し愕然とした。
⑵事例のポイント
本事例は前回に引き続き、SNSに関するトラブル例です。最近、SNS関連のトラブル例が増加しており注意が必要です。コロナ禍でドライバー求人の逼迫状況は一定改善したと言えますが、地域、車種によってはまだまだドライバ―不足状態が継続しているケースも多いです。
A社もドライバー不足に悩んでいる会社ですが、広告代理店と打ち合わせし「未経験者の応募が集まる」仕組み作りに努めていました。最近は異業種からの転職組も多く「教育研修体制」や「アットホームな雰囲気」に安心感を持ち応募してくるという応募者の特性をふまえホームページを改定、荷主との輸送条件の改善に取り組んでいました。
しかしながら、ある時期から応募数が減り始め、面接に来社する方が減少してきたため、調べてみたところ転職サイトの同社のコーナーの口コミ投稿に、退職者がかなりネガティブな内容を書いていることが発覚しました。
現場の前任の指導担当者が「昔気質」なタイプで言葉がきつく、中途入社組のドライバーが定着しない原因になっていたため、現状では新たな指導担当者に変更しています。
また、夏にはドライバーの家族も交え、ささやかながらBBQ・花火大会、奥様・親御様向けの「安全運転表彰」を行うなど福利厚生にも注力しています。
2.対応策
入社時に「SNSに関する誓約書」を取り付けること、就業規則に「SNS利用に関する留意事項」を記載することは必須です。なお、本件はネットへの書き込みなどネット関連のトラブルに専門に対応する弁護士に対応を依頼したところ、弁護士から転職サイトの運営主体に対し、「事実と相違する点」に関する指摘および削除依頼を行い、数万円のコストで投稿削除することができました。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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