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ブログ・重田 靖男
第14回:「品切れ対策会議」
2007年3月22日
その年の夏は驚異的な暑さが続いていた。経済不況は相変わらずで、先行き不安が消えていなかったが、時ならぬ猛暑の夏は消費財業界を慌てさせた。
ビールや清涼飲料水は言うに及ばず、エアコンなどの家電製品、食品、アパレル等々の業界では、2か月以上続いた猛暑で前年売り上げを大幅に上回り、生産が追いつかないだけでなく、物流面でも配送トラックが不足するという事態が起きていた。
特にこの時期、首都圏を中心にトラックの排ガス規制が施行され、規制適合車両以外は使用できなくなっていたため、ただでさえ規制対応車が十分でないところへ、ときならぬ出荷増である。消費財業界での物流担当者は追い掛け回されていた。
トーホーでも、夏物商品である日焼け止め商品や夏物化粧品がたちどころに在庫不足となり、品切れと追加生産に物流部門では毎日が戦場のような騒ぎになった。
それでなくても日焼け止め商品は、オゾン層破壊の論議などによって急速に関心が高まっており、海水浴客だけでなく夏のレジャーには欠かせない商品となっていた。業界ではいずれのメーカーも競って新製品を発売し、その紫外線防止効果を表す指標である「SPF」(紫外線防止効果の科学的指標で、SPF20とかSPF30とかいう表示をする。その数値が高いほど効果が大きいといわれている)の指標の高さを争っている。
そんな中、トーホーが発売したSPF50という新製品は抜きん出て売り上げを伸ばしていた。企業というのは面白いもので、特に製造業では、いわゆる『目玉商品』の売り上げが好調で品切れを起こすと、全社内が急に活気づく。この時期のトーホーも例外ではなかった。連日のように関連部門の打ち合わせが行われ、新任課長の大久保もそのたびに呼び出され、生産部門や購買部門との調整に走らされていた。
例のサプライチェーン改革委員会の組織は、その後、役員会を通って第1回の総合会議を終わり、その下部組織である各プロジェクトがスタートしていた。
課長の大久保は、そのプロジェクトの事務局責任者として忙しい日々を過ごしていたのだが、この日焼け止め新製品の騒ぎで、プロジェクト会議は、急遽、品切れ対策会議になってしまっていた。この記事へのコメント
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筆者紹介
重田 靖男
東京ロジスティクス研究所
1941年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。
資生堂で、物流開発プロジェクト室長、物流部長、マーケティング本部長を歴任。資生堂物流サービス株式会社社長を経て、株式会社東京ロジスティクス研究所を設立。
現在は顧問として、荷主・物流企業をコンサルティングしている。
【委員】
日本ロジスティクスシステム協会企画開発専門委員長
物流技術管理士資格認定委員および講師
日本物流学会会員 -
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