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製品・IT
日本アイビーエム 「グリーンSCM」を推進
2009年3月25日
排出権取引の枠組みがどうなっていくのかは、産業界でも注目を集めて久しい話題だ。このような中、大手メーカーなどではCO2排出量がコストとイコールになる日を見越した対策を検討し始めているという。
製造時とともに、サプライチェーンの中で最もCO2排出量の多い「輸送」。これまで「自助努力として」「荷主からの要請を受けて」CO2排出量削減に取り組んできたが、本格的にコストとして捉えられれば、様相が一変する可能性がある。
荷主がサプライチェーンを構築する中で、これまでは「(運賃という)コスト」が物流事業者を選定する際の最重要点だった。しかし、「業界団体ごとの努力目標」であったCO2排出量が「企業ごとの義務」になると、各企業は決められた数値を上回った分の排出権をよそから購入しなくてはならない。つまり、その分のCO2排出量が企業のコストになるのだ。
このような状況になるのが「10年という先ではないだろう」と見るのは、アイ・ビー・エムビジネスコンサルティングサービスでマネージング・コンサルタントを務める宮本龍也氏。「より多くのCO2排出量を削減し、他社に提供して利益を得ようと考える企業も出てくるはず」と付け加える。
これを見越し、同社は今年から「GreenSCM(グリーン・サプライチェーン・マネジメント)」の専門チームを新設。2月に輸送計画をCO2削減の観点で最適化する「GreenSCM ロジスティクスソリューション群」を発表した。
これは5つのシミュレーションツールから構成されている。ネットワークの最適化を図るための「GreenWLP」(拠点配置の最適化)、「同SNOW」(調達物流から顧客配送に至るサプライチェーン最適化)、「CTM」(CO2排出量の削減と利益最大化のトレードオフに関する最適解を算出)の3つ。輸配送の最適化を図るための「GreenMSTP」(幹線輸送における複数モードにまたがる輸配送最適化)、「同VRP」(トラックでの輸配送最適化)の2つ。
同ツール群に加え、「GPSやデジタコ、RFIDなどを使い、これまで見えなかった輸送の部分も見える化が可能になった。これらを駆使して、サプライチェーンを最適化するための全体のシナリオ作りを支援していく」と同氏は説明する。
昨今の物流拠点のトレンドは「集約」だった。しかし、CO2排出量を加味した同ツールのシミュレーションによれば、「輸送距離を短くする、つまり拠点を増やすことが解となることもある」。また、「輸送時に排出されるCO2にコストがかかれば、『人件費が安い国でモノを作る』が最高のモデルではなくなるかもしれない」とする。
産業界がこのような流れにある中、選ばれる物流事業者となるには何をすれば良いのか。同氏によると、「自社のCO2排出量をしっかり報告できること」という。「カーボンフットプリント(注参照)導入の動きもあり、CO2削減がCSRや企業イメージ向上のためでなく、ビジネスに直結するようになったら、荷主はシビアにデータの報告を要求するはず。荷主単位、オーダー単位の報告ができる事業者は強い」。
物流事業者自ら前述のデバイスをインフラとして整え、荷主側に実現可能なことを提案するのも一つ。「『運賃コストが至上命題』という前提条件が取り払われようとしている今、提案の余地は大きい」。
同社HPは、http://www.ibm.com/jp/ja/
【注】
「カーボンフットプリント(炭素の足跡)」は、商品・サービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るライフサイクル全体の温室効果ガス排出量をCO2量に換算し、消費者に分かりやすくマーク表示する仕組み。
商品表示することで、消費者にCO2排出量への自覚を促すとともに、サプライチェーンを通じた企業のCO2削減を促進させる狙いもある。経産省では、事業者、消費者が一体となった温暖化防止に向けた取り組みを促進するため、同制度の構築を進めている。 -
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