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製品・IT
日野自動車の進化する技術 「死傷者ゼロ」を目標に
2016年10月27日
日野自動車では、「交通事故死傷者ゼロ」をめざし、技術開発と安全への取り組みを推進している。同社技術研究所の榎本英彦所長は、「ひとたび事故が起きると影響が大きい大型車から取り組んでいるが、事故の特性が異なる小型車も、独自の技術開発を進めている」とし、「今後は中型車に関しても、大型車で開発した技術を順次取り入れていく」と説明する。
「アクティブセーフティ(予防安全)」の取り組みのなかでも、「年々進化している」というのが、被害軽減ブレーキ(PCS)だ。ミリ波レーダーで障害物を検出し、衝突の危険性が高まるとドライバーに警報。それでもドライバーが事故回避操作をしない場合、システムがブレーキをかけて速度を落とし、被害を軽くする機能だが、14年には新たに衝突回避機能を追加。同所長は、「渋滞末尾などで止まっているときの技術はまだ未成熟だが、先行車が動いている場合、条件が合えば回避できる」と説明する。
車線逸脱警報装置も、国による装着義務付けの動きに先行して技術開発を推進。従来の1mから0.3mと、より少ない逸脱でもドライバーに注意を促すよう、性能を向上させている。
ドライバーの回避操作をサポートし、カーブでの車線はみ出しや横転などを抑止する「ビークルスタビリティコントロール(VSC)」は、大型車に加え小型車でも標準装備。中型車では一部車型のみ標準装備している。
また、コンテナの片荷問題への対策として、海コン用トラクタ向けに「左右バランスモニター」を開発。コンテナ搭載時のエアサス圧や車高センサーの変化をとらえ、偏荷重状態で生じるトラクタの左右傾き角をドライバーに知らせる。ドライバーは運転席で異常を把握できる。
ベーシックなパーツも進化。ミラーの位置をピラーの外側に変更することで「ミラーとピラーの隙間から目視できるようにし、死角を減らす」とともに、アンダーミラーを大型車と中型車で標準装備。後方から接近する自転車なども確認しやすくなっている。
また、小型車では、ピラー幅を90mmから65mmへと狭くし、左右の視差を利用して視界を改善する「ワイドビューピラー」を採用。交差点の右折時に広範囲の前方視界を確保している。「ピラー幅を細くすることについては社内でも議論があった」というが、「特に小型車は、街中での視界確保が重要」とし、独自の技術開発へとつなげた。
「パッシブセーフティ(衝突安全)」では、車体構造の強化による「つぶれにくいキャビン」や、衝撃を吸収するステアリングなどで、「ドライバーの保護」にも配慮。衝突時に、乗用車が車体下へと潜り込むのを阻止する「フロントアンダープロテクター」も、義務付け前から装備している。
歩行者にも反応する「PCS」は、16年4月から小型車の一部車型に標準装備。「ミリ波レーダーにカメラを追加することで、歩行者も検知できるようになった。時速30km程度の低速領域なら衝突を回避できる」
また、「ドライバー異常時対応システム」の開発にも注力。同所長は、「運転中に具合が悪くなる事例が目立ってきており、異常があった際には、車を安全に止める機能が必要と考えている。これは将来の自動運転にもつながっていく技術」と話す。
今年5月には、自動走行・高度運転支援に向けたITS技術の開発で、いすゞ自動車との協業も発表した同社。榎本所長は、「1社では難しいことでも、協力できるところは協力し、少しでも早く実用化に近づけていきたい」と今後を展望する。
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