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物流ニュース
新型コロナが世界経済に大打撃 各国の物流支援策
2020年5月22日
新型コロナウイルスが世界経済に打撃を与えている。こうした状況を改善する方法は、新型コロナウイルス感染が収束する以外にはないと考えられる。そのため、世界各国の研究者がワクチン開発に注力しているが、承認プロセスが終了するまでには数か月程度かかる見込みで、収束にはまだまだ時間がかかりそうである。経営戦略コンサルティング会社のローランド・ベルガーによる、特定の地域および産業への経済的影響の分析結果から物流をみてみる。
新型コロナウイルスの感染は世界に拡大し、11日時点で、累計感染者数は約400万人、死亡者数は27万8892人となった。特にアメリカでの感染者は約132万人に達し、世界最多の感染が確認されている。ほとんどの国が経済再興を試みているものの、感染拡大の第2波のリスクは非常に高く、景気刺激策の実施を難しくさせている。
最新の状況を見るに、経済的な混乱は12週間程度継続する可能性が高い。全ての地域で新たな感染者数が激減して、初めて経済混乱から回復すると考えられる。ただし、第2波のリスクは依然として存在している。
リーマン・ショックとの違いは、需要減とサプライチェーンの断絶により実体経済に深刻なダメージが及んでいること。新型コロナウイルスは需給双方に直接影響を及ぼしている。新型コロナによる需要減のインパクトはリーマン・ショックのときよりも大きく、その減少速度も急速である。新型コロナはリーマン・ショックと比べて、より甚大かつ長期にわたる影響をほとんどの産業に及ぼす見込みだ。
国内物流ビジネスへの影響について、ローランドベルガー東京オフィスのパートナー、小野塚征志氏は「トラック輸送は、景気が減退することで中長期的には一定程度の縮小が予想される」とし、「荷主業界では、食品・飲料などは、サプライチェーンが総じて国内に閉じていることから需要が安定的。宅配・デリバリーは、外出規制とともに生活必需品を中心に需要が拡大する」としている。
実際、食品・飲料を販売するスーパーマーケットなどの量販店の売り上げは好調で、全国スーパーマーケット協会と日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会の流通3団体によると「食のライフラインとして、在宅率の高まりによる内食需要が増加した」という。
宅配・デリバリーも好調で、ECサイトによっては在庫なしの状況が続いており、外出規制によりデリバリーも内食需要の高まりで、出前館やUber Eats(ウーバーイーツ)などが注文数を大きく伸ばしている。
また、各国の物流に対する新型コロナウイルス対策について、ローランドベルガーの調査によると、アメリカでは、新型コロナ対策に関わる緊急物資を運送するトラックドライバーを対象に、「1日の最大勤務時間は14時間、運転可能時間は11時間」とする運転時間規制の適用を停止。対象物資については、医療機器、マスク、手袋、食料、燃料、仮設住宅や隔離施設の建築資材など、緊急事態宣言の拡張による運転時間規制を緩和した。
さらに、補助として、一部の州で関連基金700万ドルを活用し、医療、食品製造業、物流などの生活に必要な物資・サービスのサプライチェーンを構成する企業に対する直接融資及び融資する金融機関に対する信用保証を実行している。
EUでは、EU圏内の全てのトラックドライバーを対象に、2週間合計の最大運転可能時間を90時間から112時間 に一時的に引き上げるなど、トラックドライバーの運転・休憩時間規制を緩和。食品、医薬品、医療機器などの必需品の輸送については、国境での渋滞緩和のためのグリーン・レーン導入を要請した。また、補助については、運輸関連企業への財政支援を検討中としている。
中国では、無人配送ロボットの規制を緩和、一部の都市で配送を実施。また、補助については、物流事業者などを対象とした免税・減税措置や雇用給付(一部地方政府)を行っている。
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