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物流ニュース
【コラム:ロジSP11】ロジスティクスの進路
2010年10月14日
昨日、あるベンチャー企業の方と物流についてお話する機会があった。
半年前に起業し、ある有名なキャラクターのライセンス製品を企画・制作し、ネット通販で事業を拡大していく予定である。この会社、物流は創業当初よりアウトソーシングでいく、と決めており、何をどうするか、といった作業プロセスや実務のことは興味がない。むしろいかにして良いサービスをしてくれる企業を探し出し、有利に契約を結ぶにはどうすればいいのかが最も知りたい、という。
かたや大企業。つい最近まで物流は内製化すべきか、外注すべきか、といった議論があった。折衷案として多くのメーカーは物流子会社を設立し、「半外注」的な業態が増えたり減ったりという時期が続いたが、ここへ来て急速に物流子会社の解散や専業者への売却が進んでいる。
かつて物流は暗黒大陸で第3の利益源だ、といわれた時代があったが、もはや暗黒部分はほぼなくなり、ノウハウのある専業者に任せたほうがはるかに効率的だ、という意識に変わってきているのである。
こうなると何が起こるか。業界ごとに実績の多い大手企業への寡占化が急速に進んでいるのである。顕著な例はヤマト運輸、佐川急便といった宅配領域であり、次いで家電量販、食品、日用雑貨といった外食・小売チェーン向け消費財の物流へと波及している。
これらは物流業界同士のみならず、卸売業、特に販売代理店や業種卸と呼ばれる、売り手であるメーカーの商品に紐づく流通をもつ領域を急速に侵食している。
物流企業がどんどん荷主企業の物流を「見える化」することで、周辺業態まで巻き込んで流通を変えつつあるのである。また、寡占化の勝者である大手物流事業者は、現場実務をどんどん「見えない化」しつつある。前回の話に立ち返れば、これこそが物流からロジスティクスへの変化ではないだろうか。
これらが行き着くと、どのような状態になるのか。すでに先例はある。
鉄道を使った物流には通運会社が、船や飛行機を使った物流にはフォワーダーという業態がある。早晩、トラック物流においても、間違いなくフォワーダー業態が発生するであろう。現在3PL事業者のほとんどはノンアセットであり、事実上、トラック運送事業者のフォワーダー化している。
物流がロジスティクスに変わっていく結果が物流事業者の寡占化ならば、現場実務を担う事業者は独力で専業化へと進むか、フォワーダー化する3PLとの濃い連携が避けて通れない。当然、3PLの競争力も良い事業者との連携こそが競争力の源泉になる。
ロジスティクス化する日本の物流は、事業者に対して、今まさに戦略の見直しを迫っている。
現場実務から急速に興味を失いつつある荷主企業の話を聞くごとに、この思いを強くする昨今である。
株式会社ロジスティクス・サポート&パートナーズ
http://www.logi-sp.com
専務取締役 中根 治
「1ランク上の物流へ」をコンセプトに、交渉によるコスト削減一辺倒の日本の物流を変えるべく、現場出身の経験豊富なメンバーが日夜改善活動に主体的に取り組み、「儲かる物流」実現のサポートを行う。
また、日本の物流の実態を正確に掴むため、業界専門誌と連携しトラック実勢運賃調査、物流現場生産性調査など、現場の生の情報を発信し続けている。
現在、これらの情報をより現場で働く人にダイレクトに届けるために、物流情報ポータルサイト「物流解決ねっと」を運営、より多くの現場で働く人、物流で悩みを抱える人や企業のパートナーとなるべく活動を続けている。
欲しかった情報がここにある!
物流情報ポータルサイト「物流解決ねっと」
http://www.butsuryu-kaiketsu.net/
<前回までのコラム>
第10回:「物流とロジスティクスの違いは?」
第9回:「与えよ、されば与えられん」
第8回:「物流業界のM&Aに思う」
第7回:「心に残る意見」
第6回:「どっちが得か」
第5回:「短絡的合理性」
第4回:「成果報酬契約をしたいなら」
第3回:「やる気を削ぎ続ける国」
第2回:「元請け-下請け構造を疑え」
第1回:「儲かる物流のかたちとは」この記事へのコメント
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