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    国道43号 メリットない交通政策

    2012年4月24日

     
     
     

     「メリットの感じられない道路交通政策ばかりがあっても…。現場がメリットを感じる政策がなければ公害問題はなくならない」。公害裁判が終結して10年以上が経つ兵庫県尼崎市の国道43号では、今もなお車から排出される窒素酸化物の環境基準が満たせないでいる。
     先月末、2つの交通政策が改めて決まったが、トラックが国道43号を積極的に回避しようと感じる施策は打ち出されていない。


     「広報だけで何が解決するのか」。尼崎市内の運送事業者は、近畿地方整備局が作成した広報用パンフレットを見てそう話した。
     整備局と定期的に連絡会を持つ元公害患者の原告団が3月末、1つの結論に達した。東西両方向に3車線ずつある43号のそれぞれもっとも左側の車線を「環境レーン」と名付け、大型車は極力中央寄りの2車線を走行するように広報していく、といった内容だ。この結論には、歩行者や沿道家屋から数mでも大型車を遠ざけることで、直接の排ガスを浴びることは避けられるといった政策上の合理性があることが、パンフレットで紹介されている。
     さらに、広報看板が尼崎市内に掲げられたが、これを見たトラック事業者は政策に疑問を呈する。「もし、本当に大型車が中央寄りの車線しか走らないようになれば、大変な渋滞が起きてしまう」。
     写真の地点・尼崎市東本町は、大阪市西淀川区から伸びる43号の府県境にあたる。また、大阪から乗り入れた車が「東本町交差点」を通過する西行き車線は、跨道橋があるため登りの勾配があり、ドライバーはエンジンを吹かすことが多い。
     おまけに、阪神高速から降りてくる車がこの付近で合流するため、渋滞の多発地点ともなっている。ここに、「環境レーン」に配慮した大型車が加われば…。事業者は、沿道環境がより悪くなるのではと危惧する。
     もっとも、整備局などはこうした事態を「必然的な効果」と見ている節すらある。渋滞で大型車が大阪との府県境を回避するようになり、自然と阪神高速湾岸線へとシフトしていくのではないかという考えだ。
     ただ、重要な迂回路である湾岸線は有料であることに加えて、他路線との接続が悪い。渋滞回避のためだけに迂回することは、一筋縄にはいかないだろうとみる事業者は多い。「これで解決しなかったらまた、環境施策に非協力的なトラックといったレッテルが貼られるのではないか」。尼崎市内のある事業者は、業界のイメージ悪化を危惧している。
     「我々事業者は、完成品として作られたものを使っているにすぎない。おおもとからの問題を踏まえて対策を立ててもらいたい」。兵ト協の福永征秀会長は、3月29日に開かれた県の環境審議会に委員として出席し、購入時点では合法的なトラックを使っている事業者が、後に作られた県の条例で縛られることに違和感があることを表明した。
     審議会資料によると、2010年3月時点で、「自動車NOx・PM法」の対策地域の外にある非適合車両の割合は、県内だけで51.1%。非対策地域では登録車両の半分以上が非適合車だ。
     また、県内外の非適合車両が条例の対策地域を通過した台数は、カメラ検査の結果、10年度だけでも少なくとも357台あることが分かっている。カメラ検査の台数は37万台弱で、年間に通行する台数の数パーセントに過ぎないものだ。
     トラックの代替えにあえぐ事業者がよく言う「ざる法」感は、いまだに解消されていない。そんななか、条例は「継続する」ことだけが審議会で決まった。事業者からは、「締め付け政策がいくつあってもダメ。必要なのは43号以外を走ることのメリットだ」といった声が圧倒的だ。

     
     
     
     

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