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物流ニュース
運送事業と産廃業 優良制度を検証
2013年1月7日
荷物(有価物)と産業廃棄物――。
いわば「動脈」「静脈」に例えられる2つの物流分野は、いずれも事業許可を根底にし、一定の基準をクリアした事業者に優良認定を付与する制度が設けられている点でも似通っている。ただ近年、トラック事業者が産廃の収集・運搬許可を持つケースが増えるなかで、関係者からは「双方の事情を知る立場にあるからこそ、両業界の決定的な違いを感じる」という声も漏れる。許可および、それぞれの業界に用意された優良制度などを比較するなかで「似て非なり」の実態を検証した。
全国貨物自動車運送適正化事業実施機関(全ト協)が評価・認定するトラック業界の「安全性評価事業(Gマーク)」に対し、産廃業界の「優良産廃処理業者認定」は都道府県・政令市が審査・認定する制度で、それまでの優良性評価に代わって平成22年度の廃棄物処理法の改正で創設された。ともに通常の許可基準より高いハードルのクリアが求められるが、わかりやすくいえばトラックが「安全」、産廃は「環境」への配慮に優れた事業者であることを証明するのが本来の趣旨だ。
事業の基本となる許可はトラックが「一生モノ」である一方、産廃には5年という期限がある。トラックでも「有効期間があるGマークをさらに厳格に運用すれば、許可の更新制につなげることもできるのでは」という指摘も聞かれるが、産廃では優良認定を受けることで5年の許可が、さらに2年延長。また、財政投融資(日本政策金融公庫)における優遇措置が受けられるのもメリット。GマークにもIT点呼や違反点数の累積期間の短縮化のほか、一部の交通共済や損保で保険料割引が適用されるといったインセンティブがあり、双方に大きな差があるとはいえないだろう。
産廃も手掛ける広島県のトラック事業者は「運送でいえば荷主に当たる排出企業に対し、ゴミの最終処分が完了するまで責任が問われるのが産廃業界」と、厳しい規制や行政処分を末端の実運送事業者にばかり転嫁するトラック事業との決定的な違いを打ち明ける。数年前から廃棄物も扱う岡山県の事業者も「トラック事業のような価格勝負が通用しないのが現在の産廃」と話し、優良認定の有無が産廃処理委託の入札資格に盛り込まれようとしている現在の流れについて言及する。
「値段だけで選ぶリスクの大きさがわかっている排出元は、中身がともなった産廃業者を選ぼうとするし、小手先の法令順守が通用しないことを業者側も理解している」と広島県の産廃業者。優良認定を受けた業者は企業概要や直前3年間の産廃受け入れ量(運搬量)のほか、同期間の財務諸表までをネットで公開されることが事業環境の厳格さを物語っている。Gマークでも輸送実績や事業報告書などの提出が形式的には求められるものの、荷主や元請けに「輸送依頼の責任」が問われないなかでは認定取得へのモチベーションが上がらないのも仕方ないことかもしれない。
ただ、「環境配慮に優れた」という産廃優良認定の趣旨からいえば、「ひいては企業の優劣判定につながってしまうし、許可自体が必要かという議論も起こる」と危惧する声があるのも確かで、これは「事業者からの申請」という共通したスタイルを取るGマークについても同じだ。
「やるなら全業者を審査するべき」という見方もあるが、事業許可と優良認定の2枚看板をどう整理するか、両業界に共通した課題だ。この記事へのコメント
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