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    「ドライバーを死なせたくないし誰も殺させたくない」 運転するのは生身の人間 人命最優先の施策を

    2023年9月8日

     
     
     

    「そもそも今回の(高速道路の大型貨物車の最高速度を引き上げる)話は一体、誰が言い出したのか。少なくとも我々の業界の大半は望んでいると思えない」と、大型車両で鋼材などを扱う岡山県の運送社長。続けて「うちのドライバーを死なせたくないし、誰も殺させたくない」と訴える。

     

    ドライバー不足のなかで一人が働ける時間を短縮すれば、従来のように荷物が流れなくなることは容易に想像できる。だからといって、死亡事故を抑止するために義務化したリミッターの基準まであっさり変えようとする国の動きに、当のトラック関係者からは懸念の声が吹き上がる。

     

     

    ■ドライバーはストレスから解放?

     

    周知の通り、2001年の道路運送車両法(保安基準)の改正によって大型貨物車などへの装着が義務化された速度抑制装置(リミッター)。高速道での最高速度を引き上げるには、燃料噴射を制御して時速を90キロに抑えてきたリミッターに手を加える必要があるが、現時点では同110キロに引き上げるのか、それとも機能ごと外してしまうのかは不明だ。

     

    冒頭のトラック経営者は「少なくとも我々の業界の大半は望んでいると思えない」と話したが、確かに現場で多く聞かれる声だ。ただ、リミッター義務化の当初から「高速道路に速度の異なる車両が混在して走ることは安全走行を妨げるばかりか、事故を誘発する一因になりかねない」として、全ト協が大型貨物車の最高時速を100キロに緩和するように求めてきた経緯もある。

     

    実運送の現場には「ドライバーは(リミッターの)ストレスから解放されるかもしれない」との思いもあるが、恐れているのは重大事故の発生。スピードリミッター効果・影響評価のための調査報告書(日本自動車研究所)によれば、リミッターが義務化される前の5年間と、それから20年が経過した直近5年間(2018~2022年)を比べると、大型貨物車が高速で起こした死亡事故は3分の1に減っている。

    ■「中国道にトラックが増えることが心配」

     

    一方、「上限が100キロになれば大阪までノンストップで行ける」と広島県のトラック経営者は歓迎する。ただ、仮に上限が100キロに引き上げられたとしても、高速道には法定速度で走れない区間(規制速度)があり、山陽道で100キロが可能なのは総延長の54.9%(252.9km)。並走する中国道は山肌を縫うように造られ、トンネルは少ないもののアップダウンやカーブが多く、540.1kmという国内2位の総延長にもかかわらず、時速100キロが出せるのはわずか16.1km(3.1%)にすぎない。

     

    取引先の関係で中国道も頻繁に利用する食品輸送の経営者は「すいていて走りやすいという理由で、R(半径)の小さなカーブが多い中国道にトラックが増えることが心配」という。規制速度の80キロ(一部区間は同60キロ)を無視して、全区間を100キロで走り抜ける大型トラックによる危険な場面を連想しているのだ。背景には、国交省とネクスコ3社が1月20日に発表した高速道路の深夜割引の見直し(2024年度中を予定)がある。

     

    ■「深夜が怖い」

    深夜帯(午後10時~翌朝5時)に走った分だけが対象になる新しい割引の仕組み。「だれが考えても、その時間内にできるだけ距離を稼ごうとする。4トン車も交じって、深夜の高速本線は時速100キロのトラックであふれる光景が浮かぶ」(前出の食品輸送の社長)と危惧する。

     

    高速道路における車種別の最高速度の在り方に関する有識者検討会の初会合(7月26日)で「トラックドライバーの働き方改革に関する法律が2024年4月から適用される一方、物流の停滞が懸念される『2024年問題』に直面」と検討に至った経緯を説明。「車両の安全新技術の普及状況を確認したうえで…」と補足するが、それが“衝突被害軽減ブレーキがあれば大丈夫”というのであれば危なっかしい話。未熟なドライバーの増加や、高齢化も踏まえた慎重さが必要だ。

     

    「法定速度を20キロ引き上げれば荷物は届く…と単純に考えているようだが、運転するのは生身の人間。通信販売や宅配の業界にとっては重要な問題かもしれないが、物流全体からすればほんの一部」と冒頭の社長。「うちのドライバーを死なせたくないし、誰も殺させたくない。20キロの速度差でどれだけ疲労度が増すかを、おエライ人にも体験させるべきだ」と訴える。

     
     
     
     

    この記事へのコメント

     
    1. ターボー says:

      労働時間を減らす為に
      速度の緩和は絶対にイコールではない!
      バカじゃないの!
      ドライバーの仕事に魅力(年収)を上げる事で人は集まると思います。アメリカの物流危機を救ったように…参考にして欲しいものです

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    2. じゃっく says:

      真実に沿った制度改革を、
      本当にすぐやらないと!
      今の時代に、何年かかってるんだ!
      運送会社の社長の言うとおりだ!
      何故できない?

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    3. 匿名 says:

      昨日も豊橋北バス停に止まっていたトラックに別のトラックが突っ込み死亡事故が発生しました

      止められないからそこに止める
      ネクスコは考えていますか?
      警察は取締りパトロールしてますか?
      (不祥事ばっかり起こして)

      飲酒運転もそうですがそろそろ本気で考えてくれ

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    4. 磯野カツオ says:

      速度を上げれば一般道を爆走するトラックが出てくる。必ず大きな事故が起きる。
      なぜリミッターがついたのか?大きな事故が多発したからではないのか?事業認可を緩和して雨後の筍のように運送会社が増えたからダンピングで運賃が下がったから人手不足になったのでは?

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    5. 匿名 says:

      PA SAに止まれない休憩出来ない深夜割引待ち満車状態解消してください。

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      • 匿名 says:

        止められないからとネクスコに電話しましょう

        みんなで声あげましょう

        路駐は110番しましょう
        ヤマトかんがる腹痛とか特に110番し会社へ苦情入れてあげよう!

        大手こそネクスコ陸運に強く言えよ!

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        • パトロール隊 says:

          糞クレーマー失せろ!

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        • 客=神 says:

          それだけでは不十分。
          社名とナンバー控えて、陸運局のホームページのお問い合わせ欄から通報しましょう。速攻で指導入りますよ。実に痛快。

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    6. 匿名 says:

      氷河期世代のクォリティの高い低賃金奴隷はどこ行った?
      by団塊.バブル経営陣。日本経団連、自民党、公明党、財務省、バブルを経験したジジババ

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    7. 重トレ屋 says:

      ジャンボなんかは飛ばせていいよな。
      重トレで100なんか出せねえよ。
      マジで馬鹿ばっか。

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    8. たま says:

      リミッターが有ろうと無かろうと法定速度に従って走るのは同じ。しっかり警察が取り締まればいいだけ。追い越しかけると加速するバカとか抜けて煽り運転減る気がする 乗用車の180kリミッターの方がおかしいだろ?

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    9. 匿名 says:

      最初に100キロで走行させろと言ったのはヤマトと佐川、3年位前に新東名に110キロ区間できたから速度差あり過ぎて危ないと言ってたよ(自分は運転しない管理職だろうが)100キロは市場追っかけ組は歓迎だろうな。

    10. g.p.misago says:

      トレーラーで満載して100キロ走行とか、ゾッとしますわ。
      何があったら絶対止まれない。死亡事故が増えるのが目に見えてる。

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    11. 匿名 says:

      記事の内容とはそれますが、ドライバーの皆様に聞きたいことがございます。

      私はある企業の出荷担当をしており、いわゆる「荷主側」です。会社の方針もあり2024年問題について情報を集め、運送会社の要望(運賃値上げ・リードタイム是正等)におこたえしつつ迫る24年問題を待っているところです。一社員で大した力もありませんが、何かこの立場で出来ることはありますでしょうか? 納品先の運営会社等に待機時間改善を呼びかけているのですが中々改善されず…煮詰まっているところです。ドライバー様や運送会社様
      の悲痛なコメントを見るたび、この社会、どうにかできないものかという葛藤にかられる毎日です。

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    12. 匿名 says:

      インフルエンザの感染クラスターが、増えて 健康診断が、延期になりました
      とにかく、人が、居なくて、困ってます
      ドライバーの確保が、出来てない

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    13. とくめー says:

      制限速度あがっても、給料は下がるんだから、人手不足には変わらないよ。政府、有識者は頭の足りない人たちの集団。そんな人たちがいくら話あってもムダムダ。

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    14. モリモリ says:

      長距離をやってるけど、速度制限緩和を実施されても現在の速度平均は積載重量によるけど。
      75キロから85キロの速度を変えるつもりは無い。安全第一、無事納品に勝るモノは無い。速度を上げようが間に合わない時は間に合わない。ならば、安全かつ無事納品を優先する。飛ばしたいヤツは飛ばせば良い。その代わり事故を起こして迷惑掛けないで欲しい。他人に危険を晒してまで、急ぐ理由は無い。

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    15. スカニャン says:

      ほんと2024年問題って言えば何でもありになってるよな。喜ぶのは路線会社と追っかけの会社だけだろ。メディアはこの改正に関わった官僚と有識者の先生と議員の名前をしっかり記録しといて、将来やっぱり事故が増えましたわってなった時に責任を追及してほしいね。

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    16. 匿名 says:

      80キロ規制ってさぁ20年前の規制ですよ
      新東名も新名神も無い時代のもの

      安全は大事だけど、それを名目に新しいインフラ環境やルールを更新しないのはどうなんでしょね。
      古いままやるのが楽だから日本の停滞がある訳ですしね。

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    17. 匿名 says:

      海外はそこのお国事情もありますが、大型トラックは大体時速70〜90kmで乗用車は時速110〜130kmくらいですから、日本だけ特段に法整備や更新が遅れているというわけではないですね。現場で働く人の意見としては、荷積み荷降ろしのルールを優先で変えてもらいたいくらい。

      高速道路での速度上限の引き上げというのは、要は高速を多く利用する仕事や会社にしか恩恵が無いということ、東京-大阪間で1時間半ほどしか変わらないのなら、荷待ちの時間を1時間半削れるようにしてほしい。

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    18. 匿名 says:

      そもそも80キロのリミッターがついてる会社なんてゼロに近いだろ。
      多くは90〜100程度でしかもデジタコのアラートが鳴るだけ。
      こんな改定しても何も変わらない。

    19. 喜多川 says:

      24歳でハゲて来た😂

    20. gilraim says:

      お偉い人の車に90キロリミッターを付けて高速道路を1000キロほど走ってもらえば良い。
      トラックほどのストレスではないが、普通の精神であればそれなりのストレスを感じるだろう。

    21. 匿名 says:

      それでもなんだかんだ言って走るトラック運転手

    22. 匿名 says:

      どーせ何も変わらない2024問題

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