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    ドライバーの脳・心臓疾患 発症要因は「環境」にあり

    2015年2月4日

     
     
     

     厚労省発表の平成25年度「脳・心臓疾患の労災補償状況」によると、道路貨物運送業の脳・心臓疾患による労災請求件数は124件で、2位の総合工事業56件を大きく引き離している。職種では自動車運転従事者が159件で1位と、2位の建設従事者63件より大幅に多い。脳・心臓疾患は、労災事故の対象となるだけではなく、運転中に発症した場合は重大事故になる危険がある。なぜこれほどまでに症例が多いのか、取材を進めていく中で、過重労働とは別にドライバーを取り巻く環境そのものが発症の要因となっている現状が見えてきた。
     厚労省では脳血管疾患(脳内出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症)および虚血性心疾患等(心筋梗塞、狭心症、心停止、解離性大動脈瘤)を脳・心臓疾患の対象疾病と定めている。職業ドライバーと脳卒中や心臓病などの循環器疾患の関係は以前から研究されており、古くは1953年にイギリスの研究者モリス博士が、ロンドンを走る2階建てバスの従業員の心臓病発症率と死亡率について発表している。


     モリス氏はバスの運転者と車掌を35〜64歳まで10歳ごとのグループに分けて調べた結果、どの年代でも運転者は車掌より心臓病の発作を起こしやすいことが分かり、55歳以上では特に、その差が顕著となった。これは、座り仕事であるドライバーと、1階と2階を往復する車掌の運動量の差が原因で、加齢によってその差が大きくなったと考えられている。運動不足は循環器疾患の危険を高める肥満の原因となるが、ドライバーを取り巻く環境には、ほかにも多くの危険が潜んでいる。
     企業の健康診断や著名スポーツ選手の人間ドックや脳ドックで多くの実績を持つ戸田中央総合健康管理センター副センター長で、神経内科医の村上博彦氏(写真右)は「脳卒中や心臓病の原因は一つではなく、生活習慣上の様々な要素が複合的に影響する」と説明する。
     運動不足とも密接にかかわる要素として、食生活の問題がある。塩分のとりすぎは血圧を上昇させ、偏食や過剰な動物性脂肪の摂取は肥満や糖尿病、高脂血症の原因となる。これらは動脈硬化を進め、循環器疾患の危険因子になる。
     労働科学研究所が中小運送会社13社、大手運送会社1社4営業所に勤務するドライバーを対象に行った調査「トラックドライバーの勤務条件と疲労・睡眠」によると、中小の36.9%が「食べ物に偏りがある」と回答している。また、大手の40.9%、中小の38.3%が「塩分をとることが多い」と回答している。
     また、疲労回復で最も重要なのは睡眠だが、先の調査によると大手の29%、中小の38.7%が休日の睡眠時間について「やや不足」「非常に不足」と回答している。勤務日の睡眠と休養については、中小の41.9%が「やや不満」「不満」と回答している。また、中小の41.5%が「眠気を我慢して運転することが多い」と回答しており、中小ほど夜間・早朝の運転が多く、不定期な運行が多いため生活が不規則になる傾向があることがわかる。「睡眠は時間よりも質が大切」と村上氏は強調する。長時間寝たとしても、眠りが浅い状態では疲労回復の効果は薄い。そのような状態が続いた場合、本人は十分に寝たつもりでも疲労が蓄積してしまう。
     これら生活習慣に加えて、大きな要因となるのがストレスだ。ドライバーは長時間運転という常に緊張を強いられる環境にあるが、時間に追われながらの運転や延着の不安などがより拍車をかける。
     それでは、具体的な対策はあるのだろうか。村上氏は「健康診断の結果を積極的に活躍することが最も有効」と話す。健康への意識は向上し、定期健診の受診率も上がっているが、その結果を現場レベルで十分に生かすことができていない。「診断結果を踏まえ、本人だけではなく事業者からも指導し、対策を講じていくことが必須」と同センターの長谷川利幸次長(同左)は指摘する。そのためには、事業者側が社員の健康状態を把握し、健康診断の数値の示す意味を理解することが重要だ。
     健康診断の結果を活用し、社員の健康管理に取り組む事業者もある。
     新郷運輸(埼玉県川口市)は、社員一人ひとりに対して健康診断の結果とあわせて本人と家族に宛てた手紙を渡している。手紙には労いの言葉に加え、食生活などのアドバイスを書き添える。また、前年からの改善点を書くことで健康維持のモチベーションへとつなげている。きっかけは、「結果を見ても、何がなんだかわからない」という社員の一言。「結果をもらって終わりでは社員の健康につながらない」と、担当者が病院に問い合わせたり、本で勉強した。社員の家族からも好評で、改善に取り組むことができるようになった。
     トラックドライバーの高齢化が進む中、生活習慣病の対策は避けて通ることはできない。ドライバーの健康管理について指導することができる管理体制の整備と、健康管理の重要性についての啓発を事業者が率先して進めていくことは急務であり、事業継続のためには必須の取り組みと言える。

     
     
     
     

    この記事へのコメント

     
    1. てっちゃん says:

      私は3年前に仕事先で待機中脳内出血を起こし病院に運ばれました。当日は兆候はなかったのですがその何ヵ月前には体の半身に痺れがあり、まずいなと思いながら病院には行ってませんでした。血圧は普段から高く上は140~下が110でした。食生活は無茶苦茶で菓子パンやスナック菓子、ファーストフード、インスタントラーメンばかりでした。父親が脳梗塞で倒れてたので気をつけなければいけなかったのに馬鹿でした。会社の健康診断では常に血圧・高脂血症が異常数値でした。みなさんにお伝えしたいのは、血圧の異常は体に出ません。ただ血圧計で自分の血圧はわかります。普段から自分の血圧を把握し、気をつけて生活することで私みたいにならなくてすみます。私は医師から仕事での運転を止められて運転の仕事ができなくなりました。20年以上運転の仕事に携わってきたのに今は
      倉庫作業員です。まだ仕事ができるだけ幸せですがやっぱり運転手として色んな所に行きたかったです。今は自分の人生をあきらめています。

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    2. つぅるんつぅるん says:

      私は地場周りの集配を22年しておりました、47歳の時自宅で脳出血を発症、以来左半身不随です。
      今は非常勤公務員として、PC:の仕事をしております、ご無理なさらず、ご自愛ください、助かった命を大切に、出来ることは必ずありますよ。

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    3. 匿名 says:

      ありがとうございます。当事入院していた六人部屋では僕以外皆さん車椅子でした。私は高次脳機能障害になりましたが身体はまだ動くので幸せな方ですよね。あれから4年経ちますが今も倉庫作業員として頑張ってます。つぅるんつぅるんさんも必死に頑張っているでしょうが お互い頑張って生きていきましょう。ありがとうございました。

    4. まさんちゃん says:

      わたしめ脳卒中を発祥し入院生活をしています。当日は何も兆候も無く、石けんバラケース手積みをし、パンツ迄他人処理汗をかき積み上がり高速に上がりパーキングにて食事と仮眠を取りました。そしてトイレに行こうとトラックから降り流際に左足にチカラが入らず、下に落ちてしまいましたして立ち上がろうともが来ましたが安知上がれず雨が降る中駐車場で転がったままもがいていましたが誰も助けに来ず。2時間が経つころ、横に救急車が来てくれて助けられました。どなたかが通報してくれたようです。そのまま病気に行きもうひと月に、なります。入院で大変です。会社に労災申請してもらってますが厳しいと言う感じですね。大体運行管理のずさんなな会社であり、2泊以上の運行にも出さなきゃいけない運行指示書もない会社です。36協定もみせてもらってないので、1日最大何時間働けるのかも知りません。そろそろ大友に転院なんですけど移動費だけで23万だとか、保険外なので実費らしいです。子供らにカンパしてもらいなんとか支払いました。しかし手術もしてるので病院代が怖くてきけません。なんのために毎月高い社会保険代を収めといるのかイヤになります。

    5. 匿名 says:

      脳卒中になったら生活は一変します。一度社会保険事務所か市役所に相談されたらいかがでしょうか? これから生きていくうえでお金は必要です。しぶとく生き抜いてください。頑張りましょう!

    つぅるんつぅるん へ返信する コメントをキャンセル

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