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物流ニュース
井ノ瀬運送 井ノ瀬社長「『運送主体』の原点に戻る」(下)
2015年6月19日
気付けば40歳になっていた同社長。保有車両は40台を超えていた。この時、父親から正式に代表権を引き継ぐ。「もっと上を目指そうと顧客拡大を図るとともに、品質を求めだした時期」と振り返る。輸送品質の向上で、顧客が顧客を呼ぶ好循環が生まれ、会社は着実に伸びていった。
同社長が50歳の時、保有車両は200台を超えた。15年で車両を10倍に増やし、まさに盤石の体制であるはずだった。ところが、順風満帆とはいかなかった。
平成19年、同社は単年度で5億5000万円という赤字を計上する。物流センターの運営など手を広げたことが裏目に出てしまった。
「運送主体でいく」と舵を切り替え、原点に戻った同社は翌年に黒字転換すると、それ以降は毎年、最低2%、多い時は4%の経常利益を計上している。赤字後、採算の合わない仕事を断り、20%も売り上げを落とすなど徹底した減量を断行したというが、ドライバーは誰一人解雇しなかった。
日ごろから同社長自身、ドライバーと談笑するようなアットホームな社風が、それを許さなかったといえるが、「人が好き、車が好き、ドライバーが真ん中にいる会社」と考える同社長のこだわりでもあった。得意の運送に集中することで業績は回復し、本来のあるべき姿に戻った。
こうした経験を経て、決めたことが一つある。それは「人・もの・金のバランスを図りながら、最低5%の着実な成長を目指していく」ということ。「会社として成長していくために、売り上げ、利益は伸ばさないといけない。しかし、それは急激である必要はない。輸送品質をしっかりと保てば顧客がついてきてくれる」。失敗から学んだことでもあるが、そんな自信が今の同社長にはある。
目下の課題は「利益の確保とコンプライアンス」だ。「コンプライアンスは、人を守り大切にすること」と理解する同社長。人材不足への対策にも3、4年前から取り組んできた。
退職金や互助会の充実、さらには会社全額負担で団体医療保険に加入するなど、「安心を与えることで長く働いてもらう」という同社長の狙いがある。「平均年齢は上がっても良い。その代わり、ドライバーが個々に、人としてしっかりと成長してもらい、顧客の求めに応えられる体制を作り続けていく」と話す同社長。人材を最も重要視する同社長には、「人が集まるところに荷物が集まる」という確固たる信念がある。
◎関連リンク→ 株式会社井ノ瀬運送この記事へのコメント
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