「ドライバー不足が問題視されているなか、他産業の労働環境に合わせていく必要があるのは重々承知しているが、完全週休２日制でも当社の現在の業務状況では非常に難しい。時代に合わせていくことが求められているのは分かるが、経営者として最も大切なのは従業員の生活水準を守ること」とし、「この物価高の経済状況では給与を上げざるを得ないが、それを実現できる会社だけが今後生き残っていき、ほかは消えていくのだろう」という関西の運送事業者。

帝国データバンクが発表した人手不足倒産の動向調査結果では、２０２４年度は全国で前年度の３１３件を上回る３５０件とし、２年連続で過去最多を更新した。

物流業の人手不足倒産は４２件で、前年からは減少したものの、建設業に続き２番目の多さ。同社では、「今後も賃上げ機運はさらに加速する」「より良い待遇を目指す動きが強まったことで転職者数も増加」するなどとし、「人材獲得競争はますます激化するとみられ、賃上げ余力を有していない小規模事業者を中心に、『賃上げ難型』の人手不足倒産が高水準で推移する」と予想している。

賃上げの原資確保に価格転嫁は不可欠とするものの、全業種平均の価格転嫁率が４０.６％に比べて物流業は３２.６％に留まっている。同社では「今後、『価格転嫁→賃上げ』という流れが実現するかどうかが、人手不足倒産の動向を占う指標の一つ」と指摘している。

香川県観音寺市の運送事業者は、「人件費を価格転嫁すれば業界内での競争率は落ちる。大手企業ならまだしも、他社との価格競争で身を切る思いで経営を行っている大半の中小・零細企業では非常に厳しい」とし、「従業員の可処分所得はどの業界も増やすことが簡単ではない現状、消費税や所得税、社会保険料など自動的に差し引かれる徴収額が上がるような仕組みでは、いつまでも厳しい状況のままだ」と吐露した。