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    建設業界の人材獲得術「まずは賃金改善」

    2016年1月29日

     
     
     

     人口の減少・少子高齢化が進む日本で、今や産業全体が人材不足の課題に直面している。それぞれの業界が持続可能な生産体制を築くために若年者をターゲットとするのは必須で、〝取っては取られ〟の攻防を繰り返しているように見える。トラック運送業界と同様に人材不足の顕著な建設業界では、現代の若者の意識を捉え、まずは労働者の賃金改善から着手し、ここ数年で新規学卒者の就業率を確実に伸ばしている。
     建設業の就労者数は、建設投資の減少に伴い97年の685万人をピークに減少が続いていたが、2010年以降は、ほぼ横ばいで、2013年にはピーク時の約73%の499万人となった。総務省の「労働力調査」をもとに、1997年と2013年の建設業事業者数の年齢階層別推移をみると、15〜24歳が77万人(11.2%)から22万人(4.4%)、25〜34歳が130万人(19.0%)から74万人(14.8%)、35〜44歳が131万人(19.1%)から127万人(25.5%)、45〜54歳が182万人(26.6%)から105万人(21.0%)、55〜64歳124万人(18.1%)から118万人(23.7%)、65歳以上は41万人(6.0%)から53万人(10.6%)に推移。若年層の減少が目立ち、相対的に高齢層の割合が高まっている。また、現場で働く技能労働者の年間賃金支給総額の平均は約395万円で、トラック運送事業の大型(418万円)、普通・小型(385万円)からみても建設業も低水準であることが分かる(全産業平均469万円)。


     建設投資は90年代後半以降、減少傾向が続き、近年ではリーマン・ショック後の景気悪化で2010年にはピーク時(1992年度82兆円)の半分まで急激に落ち込んでいる。これにより過当競争が激化し、「安値受注」「短い工期」で過大なリスクが発生し、建設現場で働く技能労働者へのしわ寄せが「著しい賃金の低下」「社会保険未加入」「就労環境の悪化」という形で顕在化。他産業に人材が流出する一因となった。
     大きく流れが変わったのは、震災復興などによる需要増で労働需給がひっ迫し、国交省が2013年度に公共工事設計労務単価を全国平均15.1%、被災三県21.0%へ引き上げたことだ。建設業界に対して技能労働者の処遇改善、公共工事発注機関に公共工事設計労務単価の早期適用、主たる民間発注者団体に対して適正価格の工事発注を要請したことから、民間でも賃金増など労働者の処遇改善に向けた総合的な取り組みが進んだ。
     持続可能な生産体制の確立には、収入に関連する事項から改善に着手することが最も有効であるとし、2013年7月18日に日本建設業連合会(東京都中央区)が「労務賃金改善等推進要綱」を決定。その中で、元請けは一次下請けに対し、設計労務単価引き上げの趣旨にかなう適正な賃金が支払われるように要請することや、一次下請け以下はそれぞれの再下請けに対し同様の要請を行うよう定めている。
     翌14年4月18日には「建設技能労働者の人材確保・育成に関する提言」を公表。東日本大震災の復興需要や民間設備投資の増加で建設投資が増加に転じたことなどを背景に、適切な受注活動の実施、適切な価格での下請け契約の締結などの徹底で、技能労働者への適切な賃金水準の確保、社会保険加入に必要な法定福利費の確保などの推進によって、建設技能労働者の人材確保・育成を図るとした。例えば、建設技能労働者の年間労務賃金水準を全産業労働者平均レベル(約530万円)となるよう努め、20代で約450万円、40代で約600万円を目指すとしている。また、重層下請け次数について、平成30年度までに可能な分野で「原則二次以内」を目指すほか、明確な指針を示した。
     建設投資の需要増加の後押しもあるが、実際に新卒者の入職状況は改善傾向にある。1995年の7万8000人をピークに減少した入職者数は、2009年の2万9000人を底に増加に転じ、2010、11年はそれぞれ3万1000人、12年3万4000人、13年には3万8000人にまで回復した。
     本紙は昨年9月、全国のトラックドライバーを対象に意識調査を実施し、(1)「労働時間は長くなっても、多くの給料を稼ぎたい」(2)「給料は減っても、休みを多く取りたい」――という究極の質問を投げかけたところ(回答数668人、男性642人・女性22人・無回答4人)、20代では(1)74.2%(2)27.6%で、7割以上が稼ぎを重視していた。少なからず、若年者は現実的に物事を考える傾向にあるといえるだろう。経営者や管理者世代が考えている以上に若者はシビアだ。事業構造に違いはあるが、まず賃金の改善に着手し成果を出した建設業のアプローチの仕方は参考になるはずだ。

     
     
     
     

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